コロナ禍で消費者の節約志向が高まる中、宮崎県のローカルスーパーが破格の「逆ギレ弁当」や、厚さが約10センチもある「食べづらいサンドイッチ」を販売し、SNSで話題になっている。いずれも地元産、九州産の食材をふんだんに使った「自信作」。その値段設定もさることながら、独特なネーミングも注目を集め、今や知る人ぞ知る“全国区”の商品に。なぜこんなユニークな商品が生まれたのか。
シリーズ累計206万食を売り上げる大ヒット
ユニークな弁当やサンドイッチを販売しているのは、宮崎県内で地元密着型のスーパー「ナガノヤ」と「ウメコウジ」を展開する永野(宮崎市)。2019年12月、1個250円(税抜き)で「逆ギレ弁当」を販売したところ、「食べてみたい」などとSNSで話題になったという。
「反響は相当ありました。こういう時期なので、(宮崎に)来たくてもなかなか来られないという声もツイッターに上がっていました」
ナガノヤ芳士(ほうじ)店の甲斐丈寛店長が振り返る。スーパーの総菜コーナーに並ぶ弁当としては最安値ながら、おかずも豊富。本場・宮崎のチキン南蛮がメインのおかずになることもある。この「逆ギレ弁当」シリーズはヒット商品となり、今年4月までに累計206万食を売り上げた。
「お客さまに食べていただくならお値段もリーズナブルにしたいと。鶏肉やお米も九州産です。弁当に敷くレタスも農薬を極力落とす作業をしています」と甲斐店長。いずれも各店舗内で製造されている。こだわりの食材や加工の手間暇を考えれば、250円という価格は破格。なるほど、それで「逆ギレ弁当」なのか。
「いや実は、逆ギレ弁当という商品名には特に意味はなく、別に話題性を狙ったわけでもありません。コロナ禍になって、世の中がギスギスしてきましたので、少しでも笑顔になってもらおうと、社長が企画しました」
商品もネーミングも永野雄太社長が考案。これまでに、テレビゲームの操作を思わせる「上上下下左右左右爆発弁当」や若者の間で流行した言葉を使った「マジ卍弁当」など一風変わったネーミングの商品を次々と世に送り出してきた。厚さ約10センチと見た目のインパクトがネットユーザーに衝撃を与えた「食べづらいサンドイッチ」もその一つだという。コロナ禍前の2019年夏ごろに発売。180円(税抜き)とこちらも手ごろな価格だが、逆ギレ弁当に負けず劣らず、ボリュームは満点だ。ハムやレタス、目玉焼きにニンジン、トマトなどがぎっしりと挟まっている。「牛肉100%はごつごつして食べづらいサンドイッチ(トマト抜き)」(税抜き290円)など派生商品も生まれた。
だが、決して話題先行の商品ではないようで、地元在住とみられるSNSユーザーも「とにかく安い。そして美味しい」とツイッターで太鼓判を押す。そうなると気になるのは、本当に採算が取れているのかどうか。甲斐店長は「儲けは正直言って少ないです。材料にも味にもこだわっていますが、ただ単に値段を下げています」と語り、こう続けた。
「わざわざ足を運んできてくれたお客さまに奉仕のつもりでやっています。客寄せで値段を下げているわけでもありません」