リディアワークス代表取締役・小林史人
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、通常の公衆衛生を超える衛生環境が求められている。当社は印刷フィルム製造の経験を生かして、銅の粒子を練り込んだ半透明の除菌フィルム「キルウイルス」を開発、2021年に入ってからは可視光応答型光触媒材料を用いることで透明にした除菌フィルムをタッチパネル端末用に開発・発売した。開発を通して得た知見を基に、抗ウイルス・抗菌製品の社会貢献についてまとめてみたい。
新型コロナの特徴は、驚異的なウイルスのしぶとさにある。モノの上に付着した際に、インフルエンザよりも数倍長く生存しているという研究が数多く発表されている。このため、ウイルス量を素早く減少させることが重要だ。
よく触れる箇所は薬液による拭き取り除菌を徹底する。多くの人々が触れるエレベーターボタンなどは何度も拭き取るのは運営上困難なので、抗ウイルスフィルムを貼る。しかし、ウイルスが減少するまでに数十時間を要するフィルムが多いので、その場合は拭き取り除菌を行う。コーティングは塗料が摩耗で取れてしまうので、触れない箇所が良い。
このほか、室内の光だとウイルス減少に時間がかかるものが多いので注意が必要だ。薬液による除菌は、いったん清潔になるものの、新たなウイルスは除菌するまで長時間付着している。光触媒などのコーティングは、初回の作業時は薬液により短時間で除菌される。しかし、コーティングが乾いた後や、時間が記載されていない抗ウイルスフィルムは、ウイルス除去に数十時間かかる場合が多い。
感染を防ぐ有効な手段には、飛沫(ひまつ)感染対策と接触感染対策がある。このうち飛沫感染対策は鼻、口から飛沫したウイルスをマスクやフェイスガード、パーテーション等で物理的に遮断する。また、換気して空気中に飛散したウイルスを少なくしたり、フィルターで取り除いたり、空気を集めて紫外線で死滅させることで除去する。
一方、飛沫ウイルスはモノに付着し、手から目や鼻、口に触れてウイルスを取り込むことで感染するので、これを防ぐのが接触感染対策だ。ウイルスを研究している大学教授は「感染者がくしゃみをした際におよそ200万個のウイルスが排出され、その1万分の1以下である数十から数百個を体内に取り込むことで感染し得る」と言う。さまざまな感染対策製品を使用環境に合わせてベストな組み合わせで導入することによって、新しい公衆衛生の環境を構築してほしい。
【プロフィル】小林史人
こばやし・ふみと 本所高卒。山崎組、京王運輸、プロラボを経て2003年に家業のコバヤシ看板入社。10年リディアワークスを設立。誰でも上手に張れて環境にも優しい布看板「ルーファス」を開発し2019グッドデザイン賞ベスト100、2020年はばたく中小企業300社(経産省)選定。20年には除菌フィルム「キルウイルス」を開発し販売会社ウイルスケア設立。42歳。東京都出身。