4都府県に発令されている新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言は、11日とされていた期限が31日まで延長され、12日から愛知、福岡の2県が追加される。政府は出勤者の7割減を求めてテレワークを推進しているが、大型連休後初の月曜日となった10日、大都市圏の通勤電車や主要駅では、普段と変わらず混雑する様子が見られた。1回目の緊急事態宣言以降、テレワークの実施率は低下傾向にあり、浸透の難しさが浮かびあがる。
オフィスビルが立ち並ぶJR東京駅。丸の内北口交差点では10日朝、信号待ちをするマスク姿の会社員らが歩道を埋めた。
不動産会社で働く男性(28)は「顧客対応があるため、昨年4月からずっと出社を続けている。感染リスクが高まればテレワークに切り替えたいが…」と不安顔。別の女性会社員も「テレワークの頻度自体は昨年から増えたが、それでも週に1度がやっとだ」と明かした。
政府は人の流れを抑制する手段として、事業者に出勤者の7割減を求め、テレワークを推進。東京都の小池百合子知事も先月、通勤を含めて「可能な限り東京に来ないでいただきたい」と呼びかけた。
だが、1回目の緊急事態宣言が出された昨年4月に比べると、テレワーク実施率は低下している。日本生産性本部がコロナの感染拡大以降、企業などに雇用されて働く20歳以上の1100人を対象に実施した調査によると、テレワークの実施率は昨年5月が31・5%、7月が20・2%、10月が18・9%、今年1月が22%、4月が19・2%。実施率はほぼ2割という低い水準で推移している。
東京商工リサーチの今年3月の調査によると、「在宅勤務・リモートワークが制度化」された企業は、大企業が53・7%、中小企業が23・6%と企業規模で差が生じている。
担当者は「大企業と中小企業では人員構成が違い、中小企業では1人で複数の業務が『多能工化』している。また、テレワークの推進にはペーパーレスなどのIT投資が必要になるため、大企業の方が進めやすい」と分析する。今後も導入の格差は広がる可能性があるという。
こうした状況は主要駅の人出にも表れている。システム会社「アグープ」が提供するスマートフォンの位置情報を基にした人出データから、コロナ禍以前の昨年1月6日を「100%」として、今年4月26日までの平日月曜午前8時の人出を算出。それによると、東京駅では1回目の緊急事態宣言中だった昨年4月~5月は1月6日の3~4割で推移していたが、その後は6~7割に上昇しており、名古屋、横浜両駅も同様の傾向が出ていた。大阪駅は5~7割で推移している。一方、三ノ宮駅(神戸市)は1回目の宣言以降は7~8割で推移し、博多駅は9割を超える日もあった。
国や都は鉄道会社に対して、大型連休中の人の流れを抑えようと減便を要請。JR東日本では朝夕に減便したものの、運休した列車の前後で混雑が見られ、減便を中止する事態となるなど、人流の抑制につなげる結果にはならなかった。