北海道大樹町のロケット射場や宇宙往還機の滑走路を整備する「宇宙港(スペースポート)」構想で、施設を運営管理する新会社「スペースコタン」が20日付で設立された。航空宇宙分野は産業の裾野が広く、中小企業など地域経済の活性化も期待される。
大樹町には、ロケットベンチャーのインターステラテクノロジズ(IST)による射場がある。この射場の隣に町が新しい射場を整備し、2023年度に完成させる。さらに25年度に1カ所射場を増設する。加えて、1000メートルの実験用滑走路を1300メートルに延ばすほか、将来的には3000メートルの滑走路を新設する構想もある。町はこれらの施設を総称した宇宙港の名称を「北海道スペースポート」とした。
大樹町は宇宙港施設の運営を新会社に委託する方針。スペースコタンは資本金7600万円で、同町やエア・ウォーター北海道、ISTなどが出資した。一連の施設の整備費を50億円と試算し、その半分は町へ寄せられたふるさと納税などの寄付金で賄う。
スペースコタンの社長には、元エアアジア・ジャパン最高経営責任者(CEO)の小田切義憲氏が就いた。小田切社長は21日の札幌市内の記者会見で、「大樹町は東と南が太平洋に開かれた天然の良港。人工衛星を効率的に任意の軌道に投入できる。アジアの宇宙関連企業からの打ち上げニーズを取り込みたい」と語った。
日本の宇宙港の取り組みでは大分県が先行。20年4月に米ヴァージン・オービットが県と提携した。同社は県管理の大分空港(国東市)を宇宙港として活用。最速で22年にも、航空機を使って人工衛星を打ち上げる。具体的には大分空港から衛星を積んだ航空機が離陸。最高高度に達した後に機体から小型人工衛星を載せたロケットを発射する。
このほか、沖縄県が宇宙ベンチャーのPDエアロスペース(名古屋市緑区)と20年9月に提携。開発中の宇宙往還機が離着陸できるよう下地島空港(宮古島市)を開放する。
滑走路はないものの、キヤノン電子などが出資したロケット会社のスペースワン(東京都港区)も和歌山県串本町にロケット射場「スペースポート紀伊」を建設。今夏に完成し、21年度中の打ち上げを目指している。
これに対し、北海道大樹町は「アジアで初めて民間に開かれた宇宙港」(小田切社長)とも言える。町では人工衛星の試作や部品を手掛ける企業の誘致も進め、宇宙関連産業の集積を図る。(松村信仁)