新型コロナウイルス対策で、政府が初めて緊急事態宣言を発令してから7日で1年が経過した。外出自粛に伴う生活様式の変化を受け、外食チェーンでは持ち帰りなどへの対応を強化。百貨店でも「巣ごもり生活」で需要が増えた家具などの品ぞろえを強化したり、食料品の宅配を行ったりといった新たな取り組みが定着しつつある。
「家庭で体験できない食の時間をイートインで表現できているかどうかで業態ごとに違いが出た。従業員の生産性を上げる(これまでの)取り組みが、テークアウト需要が一気に膨らんだときの対応の差になった」
回転ずしチェーンのスシローを展開するフード&ライフカンパニーズの水留浩一社長は、2020年9月期連結決算で、売上高が過去最高を更新した理由をこう分析する。
ただ、コロナ禍の中、業績がプラスとなった外食企業はごく一部だ。夜のディナータイムが主戦場のレストランや居酒屋、牛丼といった即食性の強いチェーン、ファミリーレストランなどは不採算店の整理を進め、“体力温存”に努めざるを得なかった。
そうした中、外食各社が熱心に取り組むのが宅配・持ち帰りへの対応。新事業としてから揚げ専門店を立ち上げたチェーンも相次いだ。店での味を自宅で再現できる冷凍食品事業への投資も進む。大宴会のセット料金で稼いだ繁華街の居酒屋は、少人数向けに店内を改装したり、焼き肉店に業態転換したりと工夫を凝らす。セブン&アイ・フードシステムズは「デニーズ」5店でテレワークができる区画を設置し、閑散時の来店促進につながるか実験中だ。
他業態との提携で生き残りを図る動きも進む。ロイヤルホールディングス(HD)は商社の双日と、英国風パブ「HUB」を展開するハブは上場会社投資を始めたミクシィと、それぞれ資本業務提携して財務改善などに取り組む。事業売却による本業の絞り込みや、資本金を1億円に減資し中小企業として税制上の優遇を取り込む企業も出ている。
緊急事態宣言を機に初の長期店舗休業を経験した百貨店業界でも、アフターコロナを見据えた動きが始まっている。
投資額が大きいため凍結した店舗改装を再開した伊勢丹新宿本店は、今年3月末にキッチン用品売り場のフロアの4分の1を使って、巣ごもり需要に対応したインテリアコーナーを設けた。西武池袋本店では2月に食料品売り場の商品を最短45分で宅配するサービスを開始し、休日には約100件の利用につながっているという。(日野稚子)