金融庁は、みずほ銀行が起こした相次ぐトラブルで顧客などに多大な迷惑を及ぼしたことを重くみて、行政処分を含め厳しい姿勢でのぞむ構えだ。一方、みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長が4月に内定していた全国銀行協会(全銀協)の会長就任を辞退したことで、業界内にも波紋が広がっている。
「どうして、みずほ銀行ばかりが大きなトラブルを起こすのか理解できない」。約2週間もの間に4度のシステム障害を起こしたみずほ銀に対し、金融庁の幹部は怒りを隠さない。
金融庁は一連の障害をめぐって、銀行法に基づく報告徴求命令を出し、原因や再発防止策の報告を先月末までに求めていた。みずほ銀が進める調査や報告と並行して、障害の原因やシステムの管理体制について、集中的な検査も実施する構えだ。
3月16日、麻生太郎金融担当相は「信頼や信用を損なう非常に大きな話で、大変遺憾だ」と苦言を呈した。金融庁は、みずほ銀が提出する報告書や検査結果を踏まえ、業務改善命令などの行政処分も検討する。
一方、みずほ銀を傘下に置く、みずほFGの坂井社長は4月から業界団体の全銀協会長に就任することが内定していた。しかし、システム障害の対応に専念するため、会長就任を「当面」見合わせる。これを受け、3月末に任期を終える予定だった三毛兼承現会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ会長)がその間続投する。
全銀協会長の任期は1年で3メガバンクが輪番で務めている。だが、みずほグループが予定通り全銀協会長に就任しないのは、2011年の東日本大震災直後にシステムトラブルを起こしたときに続き2度目だ。10年前は当時の全銀協会長だった三井住友銀行頭取が任期を3カ月延長し、当時の三菱東京UFJ銀行の頭取が7月に会長に就いてカバーした。
全銀協会長は、業界を代表して当局や政界などとかけ合う重要ポスト。エース級の人材を「全銀協会長行室長」に充てて会長業務にのぞむのが一般的で、就任の半年程前から準備するなど負担は重い。みずほが会長を当面辞退することは相次ぐトラブルを考慮すれば当然とはいえ、他の大手行は困惑している。(大柳聡庸)