アズワン社長・井内卓嗣さんに聞く
--コロナ禍でも売上高が伸びている
「医療機関向けが好調で、メディカル部門の第3四半期(2020年10~12月)の売上高は前年同期比で約80%増加した。マスクや手袋などの消耗品をはじめ、簡易型のクリーンブースなど感染症対策備品の需要が増大した。EC(電子商取引)事業の売上高も約20%伸びている。対面営業の機会が減るなか、販売店専用のECサイト『ウェーブ』の導入が加速した。大手ユーザー向けの集中購買システムからの受注も下半期以降回復している」
--研究者向け支援サービスにも注力している
「研究者の『3つのない(予算、時間、もったいない)』を解消し、研究に専念できるように取り組んでいる。高額機器のレンタルや測定機器の校正、校正証明書の発行業務など受託サービスが好評だ」
--新たな取り組みは
「4月にEC営業部門の中に、顧客、特に研究部門のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する部署を新設する。研究内容のシミュレーションに役立つスーパーコンピューターや計算ソフトを販売するなど、ソフトとハード両面で研究開発スピードの向上を支援する。また、販売店向けに始めているRPA(ロボットによる業務自動化)導入支援サービスを今後、研究者向けにも拡大していく方針だ。社外とも連携しながら大学や研究機関、企業の研究部門のDX化を推進していく」
--コロナ禍で得た気づきは
「研究や医療現場への製品供給の重要性を再認識した。医療現場への供給は社会的責務であることを全社で共有し、現場は見事に応えてくれた。『アズワンなら安定供給してくれる』という信頼感が販売店やユーザーに醸成され、売り上げアップにもつながっている。研究と医療を支える裏方として社会課題の解決に取り組む」
【プロフィル】井内卓嗣 いうち・たくじ 関西大商卒。1991年日鉄商事(現日鉄物産)を経て、94年アズワン入社。2005年取締役、専務を経て09年から現職。東京都出身。