□バンダイナムコエンターテインメント社長・宮河恭夫さん(64)
--人気アニメ「機動戦士ガンダム」の40周年を記念し、高さ約18メートルの“動く”実物大ガンダムが昨年12月に横浜市で展示された(展示予定は来年3月末まで)
「30周年で東京・台場に実物大のガンダム像を建て、50日間で約400万人が来場した。そのときにある知人が『ただ立っているだけでこれだけ反響があるなら、動いたら大変なことになる』と言ったことが頭に残っていた。日本のロボット産業が弱体化する中で、人型ロボットというIP(キャラクターなどの知的財産)を生んでいるわれわれが実験体となり、ロボットを動かせば面白いと思い、約6年前にプロジェクトをスタートさせた」
--動くガンダムを作るうえでの苦労は
「そもそも動くガンダムという概念を創ること自体が難しかった。早稲田大のロボット工学博士の橋本周司氏協力のもと、技術者や企業を集め、オープンソースで世界からアイデアを募った。ただ、正解は見つからず、かなり煮詰まった。誰も創ったことのないものを創るわけで、法律上の問題をクリアする大変さも痛感した」
--煮詰まる中、どのようにアイデアを結集させた
「ガンダムの動作に関する総合ディレクターを務めた石井啓範(あきのり)氏が勤務先の日立建機を退職し、このプロジェクト唯一の専任になってくれたのは大きかった。彼はもともとガンダムが好きで日立建機に入り、情熱もあった。やはり、メンバー皆がガンダムを好きだったことが一番重要だと思う。IPの持つ力のすごさを感じた」
--起動式でガンダム総監督の富野由悠季氏が2足歩行できるガンダムを作れず「ごめんなさい」と謝罪した
「今の技術ではここまでだが、次の世代に後を託したいというメッセージだと思っている。実物を作らないと次には進めない。これを見た人たちに『自分ならこう変えていきたい』と思わせるきっかけになってほしい」
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【プロフィル】宮河恭夫
みやかわ・やすお 1981年にバンダイ入社。2014年にアニメーション映像作品の企画・制作を手がけるサンライズ社長に就任。19年4月から現職。コンピュータエンターテイメント協会理事やガンダムGLOBAL CHALLENGE代表理事なども務める。東京都出身。