無料通信アプリ「LINE(ライン)」利用者の個人情報が中国の関連会社で閲覧可能な状態になっていた問題をめぐり、ラインを情報提供などのサービスに活用している企業が対応を迫られている。ただラインを活用したサービスの利便性の高さから、各社は難しい判断を迫られそうだ。
「情報漏えいなどは現時点で確認していない」。ラインの出沢剛社長は23日の会見で個人情報の流出について否定した。ただ情報管理をめぐるリスクを最小限にしようと、政府や自治体からは相次ぎ活用を見合わせる動きが出ている。
一方、企業によるサービスは見直しの動きは鈍い。ヤマト運輸は荷物を受け取る利用者がラインを使って配達状況確認や再配達の依頼ができるサービスを提供するが、サービスの利用停止措置などは「現時点では考えてない」という。
LINEと共同出資して新銀行「LINE銀行(仮称)」を令和4年度中にも立ち上げるみずほフィナンシャルグループは、設立計画について見直す予定はないとしている。みずほ銀行で提供しているLINEで口座残高を照会できるサービスについても継続する方針だ。
ライン利用者に情報提供などができる「公式アカウント」を維持する企業も多い。公式アカウントで最新のガス・電気料金や自社ポイント残高を閲覧できる東京ガスも現時点の対応は考えていないとする。出沢氏は「多くの変化はない状況で感謝している」と話す。
ただ行政での利用停止が広がる中、情勢を見定めようとの動きもある。
ゆうパックの不在通知などをLINEに送るサービスを展開する日本郵便の関係者は「登録者数が800万人がいるサービスで利便性も高い。現時点ではサービスを止める話にはなっていないが、今後の情勢をみつつ、必要ならば止めることも検討する」と判断の難しさを語った。