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ルネサスの工場火災、半導体不足拍車で自動車各社深刻 本格復旧まで半年とも

 半導体大手ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)の火災をめぐり、世界的な半導体不足に拍車を掛けるとして不安の声が広がっている。同社は自動車用半導体の世界的なトップメーカーで、1カ月以内の操業再開を目指すと発表。復旧の遅れは国内外での自動車の減産に直結するが、専門家からは「元の状態に戻るまで半年程度かかる」と悲観的な見方も出ている。

 車載用マイコン1位

 火災は19日未明に「N3」と呼ばれる工場棟のクリーンルームで発生し、敷地面積の5%に当たる約600平方メートルが焼けた。めっき装置から出火したとみられる。室内には先端品の直径300ミリのシリコンウエハーを手掛ける生産ラインがあり、製造装置の2%にあたる11台が焼損。このうち4台は他のラインなどで代替生産ができず、新しい装置の調達が必要となる。さらにクリーンルーム内がすすに覆われたため、清掃作業にも一定の期間がかかる見通しだ。

 半導体業界に詳しい英調査会社オムディアの杉山和弘コンサルティングディレクターは、代替装置に関し「世界的な半導体不足の影響で注文が殺到しており、納入されるまで5、6カ月くらいかかりそうだ」と指摘。クリーンルームの清掃も「高い清浄度を確保するには2カ月程度は必要だろう」と分析する。

 オムディアの調査によると、ルネサスは自動車の走行を制御する半導体「マイクロコントローラー(マイコン)」のトップメーカーで、2019年の世界シェアは30.2%と首位を誇る。このためトラブルの影響は大きく、東日本大震災の際には今回火災を起こした那珂工場が被災し、自動車メーカーが長期間の生産休止に追い込まれた。東日本大震災後は被災時の早期復旧に向けて、耐震補強や在庫積み増しなどの対応を取っていたが、今回の火災では、今年2月の福島沖地震で那珂工場が一時停止した際に在庫を使ってしまったため、自前での追加対応が難しくなってしまったという。

 他社への代替生産についても、世界的な半導体不足で余裕がないことに加え、米テキサス州の寒波の影響で世界第2位のNXP(オランダ)やインフィニオン(独)の現地工場が停止している。杉山氏は「政府も一緒になって強力に代替生産の要請をしないと、海外メーカーも応じないだろう」と強調する。

 ルネサスは、世界的な半導体不足を受け、世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)に委託していた半導体製造の一部を自社に切り替え、那珂工場で製造していた。改めてTSMCに委託をしようとしても「世界中からTSMCに注文が殺到している」(杉山氏)という。

 政府支援も必須

 加藤勝信官房長官は22日の記者会見で、ルネサス工場火災に関し、「代替となる製造装置の調達支援など、早期復旧に向けてしっかりと取り組む」と述べたが、復旧期間の短縮には、より強い政府の支援が必要だといえそうだ。(桑原雄尚)

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