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イチゴ栽培、IT化で農業活性 明るい未来を信じ起業家奮闘 東日本大震災10年 (1/2ページ)

 東日本大震災の発生から10年が経過する。発生直後の混乱の中で、明るい未来をつくろうとの思いを胸に創業した起業家たちがいる。起業家3人の今を追った。

 仙台市から南に30キロ離れた宮城県山元町。農業ベンチャーのGRAはここで高級イチゴを栽培している。東京でIT企業を経営していた岩佐大輝最高経営責任者(CEO)は、震災発生の翌日に生まれ育った山元町に向かった。

 ◆「故郷立て直したい」

 そこで目にしたのは、「空襲後の焼け野原のような、ただただ悲惨な光景」。イチゴ畑をはじめ、ありとあらゆるものが津波で流されていた。

 いったん東京に戻り、仕事仲間などに声をかけてボランティアチームを結成。週末ごとに山元町で地元住民と一緒にがれきの撤去にあたった。「故郷を立て直したい」。その思いを胸に、IT企業の経営はすべて共同経営者に任せ、山元町でGRAを立ち上げた。

 とはいえ、農業に関しては全くの素人。賞味期限が短いイチゴは価格設定で買い手有利になりやすい。農家の所得維持が難しく、後継者難という課題も抱えていた。再び栽培できるようにするだけでなく、「農業にもビジネスとして資本市場から目を向けてもらえるエコシステムの確立といった構造的な課題の解決も必要」と感じていた。

 地元の農家の指導を受けながら、栽培を開始したのは2011年秋。IT企業での経験を生かし、栽培ハウス内の温湿度や照度の調整、管理に最先端の技術を取り入れた。そのため多額の設備投資が必要となり、岩佐社長は個人保証を付けて2億円余りを銀行から借り入れた。

 12年12月に「ミガキイチゴ」というブランドイチゴが完成。出荷は順調で、ミガキイチゴを使った洋菓子店も都内などに続々と出店している。東北随一のサーフスポットとしても有名な山元町。最近は若い人の移住も増えてきた。GRAによって近代化した農業が新たな雇用と産業を生み出している。

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