無料通信アプリ大手のLINE(ライン)と経営統合したZホールディングス(HD)の共同最高経営責任者(CEO)の川辺健太郎氏と出沢剛氏は2日、フジサンケイビジネスアイのインタビューに応じ、川辺氏は「国内外で共通のサービスを毎年定期的に出していきたい」と述べ、海外進出を強化する考えを示した。ZHDは2021年度中に世界向けの新サービスを提供する方針。世界で通用する日本発となるサービスの開発を目指す。
ZHDが運営する「ヤフー」はもともと米ヤフーとソフトバンクの合弁で生まれ、サービスは日本国内に限定されていた。台湾やタイ、インドネシアに進出しているLINEとの経営統合で海外進出の足掛かりを築くことができた。
川辺氏は「いいサービスをつくればあっという間に広がる。(中国系動画投稿アプリの)『TikTok(ティックトック)』がその典型だ」と指摘。海外展開にあたっては、LINEが東南アジアで展開する通信アプリと宅配サービスや金融を組み合わせたサービスを定着させるほか、ソフトバンクグループの投資ファンドなどを活用してサービスの多角化を進める。出沢氏も「インターネットの世界は流れが早く、旬のタイミングがすべてにある。柔軟な形でいろいろな連携の仕方がある」と述べ、企業の合併買収(M&A)にも積極的に取り組む。
人工知能(AI)分野に5年間で5000億円の資金を投じる。約7割を人材確保や研究開発に充て、AIを自社開発する。出沢氏は「途切れなく争っている環境で戦わないといけない。開発力がキーだ」と話す。
AIを使えば、利用者の同意を得たうえで、行動履歴などを分析し、個人に合わせ、最適な広告を出せるなどの付加価値を生み出せる。防災では、一人一人の状況に合わせた避難情報なども提供できる。行政手続きでは、手続きの簡素化につながるデジタル化が求められており、さらなる成長も期待できる。
ただ、GAFAは1兆円規模の開発投資を続けており、資金力の差は大きい。川辺氏は「(GAFAの世界共通のサービスに対し)地域に根差したサービスで利用者の支持を得ていく」と対抗する考えを示した。(高木克聡)