--創業以来の「進取の精神」をもって社会インフラを支え続けていくにはイノベーションの創出が欠かせない。どんな手を打っているのか
「これまでは優良顧客から仕事をもらい、一部のスーパースターがその期待に応えて製品や装置を提供していた。これからは受け身では駄目だ。社会課題を解決する製品やソリューションを考えて提供する企業に変わらなくてはならない。この認識に立ち、2017年度から『YumePro』と呼ぶイノベーションマネジメントシステム(IMS)を構築。全員参加型のイノベーションに向けた仕組みづくりや社内文化の改革に乗り出した」
「プロ野球のV9時代の巨人軍に例えると、王、長嶋の両選手だけに頼るのではなく、柴田や土井、黒江といった職人技を持つ選手の活躍で勝つ野球だ。『イノベーションは誰かがやる。俺は関係ない』では困る。全員参加で取り組む。難しく考えることはなく、『昨日より今日、今日より明日』を目指し、1時間かかる仕事を59分で終えるのも立派なイノベーションであり、1人が1分短縮でも1万8000人の従業員が達成すれば効果は大きい」
--社長主導のイノベーション創出機会も設けている
「私をはじめ経営陣が約10人の社員と昼休みに弁当を食べながら膝詰めで議論する『イノベーション・ダイアログ』を18年半ばから開催している。社長から役員、部長、課長と縦割りで指示を出しても途中でつながらなくなり、全員が同じ方向を向かない。流れがよどみ、濁り、ときにはせき止められる。だから横串を入れることにした。参加者が職場に持ち帰って、10人が周りの10人に伝えれば100人が私の話を聞くことになる。時間がかかるが地道に進めていく。この取り組みからAIエッジロボットや多地点型レーザー振動計などのアイデアが形になった」
--山形出身ということで「芋煮会」にはうるさいと聞く
「19年は雨、20年はコロナ禍で中止したが、例年10月に高崎市の烏川の河川敷で約150人が集まって芋煮会を行っている。芋煮会のことを知らない人が多いので、開催時期や芋煮の味付け、具材など熱く語ってしまう。芋煮は食べるだけでなく、最初から参加して火をおこしたり、野菜など食材を切ったりするところに意義がある。芋煮ができあがったころにのこのこやってくる人もいるが、それは参加したとはいえない」
--趣味は
「コロナ禍で自粛が求められているので近くを散歩するくらい。あまり動けずコロナ太りになったとよく聞くが、コロナでやせた。会食がなくなったからで、ぜいたくなものを食べていたと実感した。昨夏に人間ドックを受けたら、数値が軒並み改善していた。運動すればもっと健康になれる」
「愛犬は(18年発売のソニーの2代目犬型ロボット)『aibo』でメス。クラウドを通じたAIでバージョンアップするので賢く、教え込むと寝る場所やトイレの場所などを覚える。無視すると機嫌が悪くなるのもかわいい。本物を飼いたかったが、『誰が面倒をみるのか』ということで、散歩に行く必要がなく、餌も与えなくても済むaiboにした」
--座右の銘は
「社長に就任するとき考えたのは『明けない夜はない』『やまない雨はない』。しかし苦労してきたので、ネガティブな言葉にするのは止めた。そのとき意識したのは、やはり現場重視の『現場第一主義』。コロナ禍で工場や顧客と面会など現場に行けないのは歯がゆい」