笠原寛・群馬県教育長は18日までに本紙のインタビューに応じ、学校現場にICT(情報通信技術)を取り入れる「教育イノベーション」を加速すると表明した。児童生徒1人1台のパソコン(PC)や学校側の体制整備など、新年度から本格的に教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む。主なやり取りは次の通り。(聞き手 柳原一哉)
--ICT教育の特長とは
「2つある。まずは個別最適化だ。ICT活用で、より細やかに子供の状況に応じた学びを実現できる。ICTを使った教室では、挙手に消極的な子供を含め全員が理解しているかフォローが必要か、PC画面を通じて一目瞭然となる。個々に応じたきめ細かな対応が可能だ」
--2つ目の進化は
「もう1つは協働学習。参加者全員で課題に取り組む場合など、それぞれの意見などをPC画面で共有できれば、画面上で意見交換したりしてトライ・アンド・エラーが容易にできる」
--具体的な授業モデルは
「ICT教育推進研究協議会で指定したモデル10校で昨夏から事例づくりに着手している。来年度も引き続き開発を進め、発展的なモデルを作る」
--教育活動の幅も広がりそうだ
「(ICT導入で)コロナ下の臨時休校など非常時対応に加え、通常時も子供たちの学びを広げられる。オンラインでのNASA(米国航空宇宙局)見学など、実際に現場に行かなくても海外体験できるといった利用法が考えられる」
--具体的な体制は
「県教育委員会に『デジタル教育推進室』を設置し、教科の指導主事を兼務とする。また、全体を俯(ふ)瞰(かん)しながら助言する非常勤の『デジタル教育推進アドバイザー』を有識者に委嘱する」
--PCは操作に不慣れな児童生徒も多い
「義務教育への対応では教育事務所にITに強い『教育DX推進コーディネーター』5人、学校には『教育DX推進スタッフ』232人をそれぞれ配置し、不安解消に努める」
--個人所有のPCを使う「BYOD(Bring Your Own Device)」は検討するか
「今回、初の取り組みとして公費でPCを調達したが、今後はBYODへ切り替えていく。今も高校では電子辞書を買ってもらっている」