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大阪・ミナミの黒門市場、春節迎えるも消える中国人客で売上激減

 中国で春節(旧正月、12日)に合わせた大型連休が始まった。例年、多くの中国人観光客が来日する時期だが、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、観光地ではそうした姿は目立たない。中国当局による旅行自粛要請などもあり、「観光目的の訪日はゼロに等しいだろう」(観光庁の担当者)。1年で一変した光景に、関係者からは「天国から地獄に落ちたみたい」との声が漏れた。(石橋明日佳)

 12日午後、大阪・ミナミの黒門市場。昨年のこの時期はキャリーバッグを手に買い物を楽しむ中国人観光客でにぎわったが、今年は一転して客足はまばら。シャッターが閉まった店も目についた。「昨年と比べて売り上げは1割未満。お客さんが戻るまで店が持つかどうか」。マグロ専門店「まぐろや黒銀」の取締役、木下信代さん(75)は肩を落とす。

 呉服店と土産店を経営する宮本敏男さん(78)は「商売を日本人から外国人向けに切り替えたことが裏目に出ている」。廃業や休業を余儀なくされた訪日客頼みの店も出ているが、「お店を閉めると活気も魅力もなくなる。黒門全体で我慢して何とか客足を取り戻したい」と話した。

 春節の時期、中国では1週間程度の連休となり、例年は延べ30億人が移動する。連休に合わせた海外旅行も定着し、日本は人気旅行先の一つだった。

 ただ今年の春節前後の40日間に移動する人は、新型コロナ流行前の一昨年と比べ、6割減の11億5200万人になるとの報道がある。

 新型コロナウイルスの変異株の国内侵入を阻むため、日本政府は段階的に水際対策を強化している。昨年12月末には外国人の新規入国を原則停止に。さらに菅義偉(すがよしひで)首相は今年1月13日、例外としていた中国や韓国など11カ国・地域とのビジネス目的の往来も一時停止すると表明した。

 一方、「特段の事情」があれば、例外的な入国は認められている。出入国在留管理庁によると、日本に配偶者や子が居住▽病気の治療▽親族の葬儀や出産-などが理由に該当する。

 同庁によると、昨年12月は約5千人が、今年1月には2千人超が、それぞれ特段の事情で入国した。担当者は「命がかかわるものなど、本当に日本にいなければいけない場合にのみ審査の上で入国を認めている」と話した。

 観光を理由とした入国は認められておらず、観光庁の担当者は「春節の時期でも、観光を目的とした訪日客はゼロに等しいだろう」との見方を示した。

 関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は政府の水際対策について「新規の感染を防ぐ一定の効果を見せている」と評価。「ただ、この状況が続くと経済への打撃が大きくなる。感染状況を見て、国ごとに出入国を許可するなど、臨機応変に対応する必要がある」と述べた。

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