高エネルギー加速器研究機構などは9日、新しいタイプの素粒子ニュートリノを探す実験を大強度陽子加速器施設「J-PARC」(茨城県東海村)で開始したと発表した。宇宙を満たす正体不明の「暗黒物質」の候補とされる未知の素粒子で、発見できればノーベル賞級の成果という。3年後をめどに存在の兆候を見つけることを目指す。
ニュートリノは物質を構成する最小単位である素粒子の一種で3種類が見つかっているが、「ステライル型」と呼ばれる第4の種類が存在するとの仮説がある。存在を確認できれば、素粒子物理学の基本法則である標準理論の枠組みを超える大発見になる。
ニュートリノは宇宙や身の回りを高速で飛び交っており、飛行中に別の種類に変身する性質がある。この現象は、従来のニュートリノは数百キロ飛行しないと起きないが、新型は質量が大きいため、数十メートルの短距離で起きるとされる。
加速した陽子を水銀に衝突させて大量のニュートリノを発生させ、24メートル離れた装置で観測。新型に特徴的な変身現象の検出を目指す。装置は昨年2月に完成したが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で本格的な実験開始は今年1月にずれ込んだ。
米国でも同様の実験が進んでおり、競争は激しい。同機構の丸山和純(たかすみ)准教授は「世界に先駆けて成果を出せるよう尽力したい」と話した。