映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の興行収入が公開から73日間で324億円を超えた。国内で上映した映画の歴代興行収入ランキングは、19年ぶりに「千と千尋の神隠し」を抜いて1位となった。親子で、カップルで、友人で、また一人でも楽しめる幅広い年齢層に響く世界観が旋風を巻き起こし続けている。マンガの最終巻となる23巻発売日には、全国5紙に掲載された全面広告を目にした人も多いだろう。
昨年からじわりとやってきた旋風の経済効果は2700億円超だといわれている。さらに伸び続けるだろう。私はまさに新しくやってきた「風の時代」にこの現象が重なり合うような気がしてならない。風の時代とは、2020年12月22日より始まり、今後200年続くとされている新時代のこと。
知り合いの経営者や知人に「風の時代ですね」と話しかけると、「そうですね。やはり情報が大事ですかね」とか、「そうですね、個性が大事な時代ですね」と答えてくれる人が多い。これは感度の問題であろう。占星学(アストロロジー)の世界なので詳しい人は日常語のように使う。
では風の時代の前はいったい何かというと、「地の時代」だった。地の時代が象徴していたものは、経済、資産、組織、学歴、ブランドなど。積もっていくものが価値あるものとされていた時代。もっと多く、またそれを手にするモノや人が価値ある時代とされていた。
そこから一転、風の時代に突入。この時代の中心に躍り出てくるキーワードは、センス、情報、オリジナリティー、波長なのだそうだ。ビジネス書の書評も書いているので、時代のキーワードやタイトルを意識することが多い。まさに昨今、ビジネス書の世界でも、シンクロするかのようにそのような言葉のタイトルが目立つのである。コミュニティー、自分はいったい何者であるのか、センス、ビジネスにもアートが必要、オールドスタイルの終(しゅう)焉(えん)など。時代をとらえた本がやはり売れていると思わされる。
これからの時代は、固定観念をいかに取り払っていけるかが重要になるのではないだろうか。女の子なんだから、男の子なんだから、長男だから、長男の嫁だから、上司なんだから、部下なんだからなど。もはや死語となるであろう。いつの間にか男性用化粧品なる市場が出来上がっているが、もはやジェンダーフリーのコスメが誕生する時代である。女性用、男性用という概念も古めかしくて笑われるのかもしれない。ファッションデザイナーのマーク・ジェイコブス氏が、「洋服に性別はない」と語っている。これから200年続くとされている風の時代は、人と違うことが魅力となる時代なのである。
最後に冒頭の鬼滅の刃の話に戻したい。鬼になった妹を人間に戻すため奮闘する主人公の少年、竈門炭治郎。彼のシンボルカラーは緑色の市松模様の羽織である。緑色は調和を表す色。いままでアニメの主人公で緑色が主役にくるような世界があっただろうか。戦隊ものでは必ず真ん中に赤色のシンボルカラーなるヒーローがいたはずだ。緑は「第4チャクラ」の色で、そこが意味するものは愛や慈愛だそうだ。ヨガに詳しい人ならよくご存じであろう。自分に、そして他者に無条件の愛や感情を寄せられる世の中になっていくことを願う。
芝蘭友(しらん・ゆう) ストーリー戦略コンサルタント。グロービス経営大学院修士課程修了。経営学修士(MBA)。うぃずあっぷを2008年に設立し代表取締役に就任。大阪府出身。著書に『転職・副業・起業で夢が実現!安く売るより高く売れたい』(WAVE出版)、『死ぬまでに一度は読みたいビジネス名著280の言葉』(かんき出版)がある。