今秋公表された今年の厚生労働白書の柱の一つに、正規、非正規を問わず、多様な雇用形態のメンバーが能力発揮できる環境整備というテーマがある。同一労働同一賃金も、有期労働契約のルール改正も実現していきたい課題だが、そのためには、組織のリーダーが、属性の異なるメンバーと縦割りではなく、横串を刺して捉えることが重要だ。
私が能力開発演習を実施している自動車メーカーでは、1組20人程度が参加するプログラムに、職位も部長、課長、一般社員の各層から、雇用形態も正社員、他社へ出向社員、他社から出向している社員、契約社員、派遣社員から、国籍もさまざまなメンバーが参加している。
部長に対してのみ伝えたい、課長に対してのみ理解を深めたいといった研修については、おのおのの階層だけで行う意味があるだろうが、演習主体でその場でスキル発揮力を高めるプログラムでは、横串で捉えて、多様なメンバーが集まれば集まるほど、演習効果が上がる。
雇用形態が異なる社員を一堂に会して演習しようとすると、必ず出てくるのが、育成責任は出向元にある、派遣会社にあるという懸念だ。しかし、こうした縦割りの発想で捉えていては、いつまでたっても能力開発が図られない。
こうした職位や雇用形態を超えた多様なメンバーでプログラムを実施できるかどうかは、参加者一人一人が壁を乗り越えられるかにかかっている。部長が一般社員と演習することに抵抗感を払拭できるか、派遣社員が正社員とともに取り組むことに躊躇(ちゅうちょ)しないかということだ。
これさえ乗り越えて、横串で実施できれば、多大な成果を獲得できる。多様なメンバーで演習することで、スキル発揮レベルの高低を横串で捉えることができる。適材適所が進みやすい。モチベーションファクターのばらつきが把握できる。