大阪・難波と関西国際空港を結ぶ南海電鉄の特急「ラピート」の台車で昨年8月、長さ約14センチの亀裂が見つかった重大インシデントで、運輸安全委員会は26日、調査報告書を公表し、台車メーカーによる溶接作業の不備が原因で亀裂が生じた可能性が高いと指摘した。
ラピートをめぐっては平成29年以降、8つの台車に計10カ所の亀裂が見つかっていた。南海は26日午後、大阪市内で記者会見し、梶谷知志(さとし)・鉄道営業本部長が謝罪した上で「調査報告書を真摯(しんし)に受け止め、再発防止策を確実に履行することで安全性を確保する」と述べた。南海は来年度中に、ラピートのモーター搭載車両の全36の台車を安全性の高いものに交換する。
南海によると、台車は旧住友金属工業(現日本製鉄)が製造した。報告書によると南海は17年、モーターを支える台車部分の強度を上げるため補強材を取り付けることを決めたが、担当した旧住友金属工業が本来行うべき作業工程を実施しなかったため、溶接部分に亀裂が生じたとみられる。
南海は当時、亀裂部位について、磁気を帯びた粉を振りかけて表面の微細な傷を見つける「磁粉(じふん)探傷検査」の対象としていなかった。報告書は「定期検査では亀裂を発見できなかった可能性がある」と指摘。南海はすでに検査マニュアルを改訂しており、亀裂部位を同検査の対象に追加している。
トラブルをめぐっては昨年8月23日夜、ラピートの走行中に車掌が異音を聞いた。検査担当者の確認では異常は見つからず、南海は営業運行を続行。運行終了後の点検で、2号車の台車中央にあるモーター付近の溶接部分で長さ14センチ、幅1ミリの亀裂が見つかった。
報告書は、亀裂発見部位と車掌が異音を聞いた場所に距離があるとし、「異音と亀裂の関連性はなかった」と指摘。南海の対応については「検査の担当者や修理の手配をしており、早急な処置に努めたと考えられる」と結論付けた。