高論卓説

夜間営業がなくなる社会 余る時間をどう過ごし活用するか

 JR東日本が来春、終電時間の繰り上げを実施すると発表した。対象は山手線など17路線。山手線内回り、外回りで最大20分程度早まるという。新型コロナウイルスの影響で深夜の需要が減ったということが最大の原因である。終電後に行っていた線路の保守、点検作業の時間を確保する時間に充てるという。

 作業員数が減少しているのに、作業量は増大している現状。世間では大きなニュースになっているが、時代の流れから考えて当然であろう。冷静に分析すれば、平日の利用者において試算すると影響を受けるのは2万人程度で、首都圏利用者の1%未満だといわれている。

 夜の営業が続々と縮小や停止に向かう世の中になっていると寂しく思う人も多いのではないだろうか。筆者もよく利用していたオンデマンド印刷サービスを提供するキンコーズも直営店の24時間営業は全て廃止された。キンコーズは、急な印刷や大量印刷、大判印刷などどんな時間にでも対応できるからこそ便利な存在だと思っていた人も多いのではないだろうか。

 さらに郵便局のゆうゆう窓口も、24時間営業だったものが平日は午後7時までとなり、24時間営業局の開始時間も午前7時に変更されている。これらの背景にあるのはいったい何なのか。もちろん社員の労働環境を守るための働き方改革でもあるだろう。

 しかしなにより、いまだ収まる気配を見せないコロナ禍においてあぶりだされた生産年齢人口の減少も大きな要因である。

 これからは時間が余る時代なのである。にわかには信じられないと思う人もいるかもしれないが、余った時間をどう使っていくか、その時間をどう生きていくかということが心の豊かさと直結していく時代に突入する。昭和から平成に移り変わった1989年には、新語・流行語大賞として「24時間戦えますか」が選ばれたが、それが死語であるというのは簡単である。もはや今の時代の時間軸はもっと長く、人生100年時代である。

 昨今は在宅ワークを推奨する企業も増え、通勤時間から解放され、無駄な会議や会食や接待からも解放された人も多いだろう。ますます時間は余る時代になる。家族で過ごす時間が増えることになる。

 今までは漠然と時間に流され、終電を追いかけて走り回っていたような生活は過去の遺物となるのではないか。

 日本ではコロナ禍において、一気に「ウーバーイーツ」の知名度が上がった。街でそのロゴを背に自転車で走り回る配達員を多く見かける。これも自らの余った時間で仕事ができるという気軽さがあるから成り立つサービスである。つまりここで時間のシェアリングが行われている。

 米国では移民だけではなく、ミュージシャン、役者、アーティストなどがドライバーとなり、余った時間を切り売りすることで始まったシェアリングエコノミーである。やりたいことが別にある人にとっては最適な働き方ができる世の中でもある。

 筆者の知り合いでハードな仕事についている知り合いがいたが、在宅ワークが続くようになり、時間が余るようになりウクレレを購入したという。ユーチューブでウクレレ奏者の動画を見て学び、自分も弾けるようになりたいと目を輝かせていた。余る時間をどう過ごすかは、まさにこれから自分がどう生きたいかを問われる時代でもあるのではないだろうか。

【プロフィル】芝蘭友

 しらん・ゆう ストーリー戦略コンサルタント。グロービス経営大学院修士課程修了。経営学修士(MBA)。うぃずあっぷを2008年に設立し代表取締役に就任。大阪府出身。著書に『転職・副業・起業で夢が実現!安く売るより高く売れたい』(WAVE出版)、『死ぬまでに一度は読みたいビジネス名著280の言葉』(かんき出版)がある。

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