高論卓説

関心高まるオンライン診療 普及に医師・患者のリスク共有不可欠

 遠隔医療学会の入会者が増加し、例年にない注目度である。関連する企業を含め関心が高まっているのは、現在の流れから当然であろう。遠隔医療には、医師が患者に対して診断や投薬まで行う「オンライン診療」、受診を勧める「オンライン受診勧奨」、相談のみの「遠隔医療相談」があり、「オンライン診療」は「遠隔医療」の一つである。さらに、医師間における遠隔医療としての遠隔画像診断などは、既に広く活用されている。(永井弥生)

 診療内容としてオンラインでも十分な場合の便宜、すなわち生活習慣病など慢性疾患で安定した状態での投薬などであれば、直接診察と変わらないケースも多いかもしれない。しかし、オンライン診療が推奨される一方で、そのメリット・デメリットは医師(医療側)と患者側、双方にあることを理解しておくべきであろう。

 患者側のメリットとしては、高齢者、遠方などの理由による通院困難者への対応が可能、通院時間の節約により、日常生活に支障をきたす学生などへの便宜が図れる、などがある。医療側にとっては、患者側にこれらのメリットを提供でき、診療の簡略化や効率化を図れる可能性もあるというメリットがある。院内感染のリスクを下げるという点は両者にとってのメリットである。

 一方でデメリットもある。患者は直接の触診などの診療は受けられないことにより、受けられる診断・治療の精度が低下する可能性がある。また、直接の対応から得られる微妙な重症度の判断や、両者の信頼関係に影響する可能性もある。患者側のデメリットは、医師にとってもデメリットであるとともにリスクでもある。

 もともと、医療のリスクはゼロにはできないものであるが、医師は少しでもそのリスクを下げる状態で診療したいと考える。予期できる医療側のリスクという点からは、オンライン診療の限界を都度説明し、理解いただいた旨を記録に残すと言った対応を取るべきではないか、そこまでするのはやりすぎかもしれない、などさまざまな意見は出るところであろう。

 少なくとも、「オンライン診療のリスク」というものを、医師と患者が共有理解したい。現在議論されているが、初診でのオンライン診療が継続的に可能となっても、診療の目的が明確でリスクが低い場合に限るべきであるし、医療側はそれを見極めての対応が求められる。実際の現場では、適切な対応スキルを有する医師が、慎重にメリットが上回ると判断したときに行うべきであろう。

 このほかの医療側のデメリットは、体制にかかるコスト、診療報酬の問題、対面に比べて時間がかかる可能性などがある。対面診療に比べて低い診療報酬の問題が一番大きいが、忙しい地域の病院などにおいては、時間や体制の問題も見過ごせない。テレワークが推奨され変化する社会の状況と同様に、オンライン診療を前進させるための議論は進んでいく。医療は人と人が強く関わる場であり、システムだけでは人の安心感は得られないこともある。システムや体制が作られても、それを活用するのは「人」である。

 新しい体制のメリット、デメリットを踏まえて、時代の流れの中でいかに活用していくのか。リスクは医療者だけが担うのではなく、患者とも共有しながら、先端技術の恩恵を最大限に活用していきたいものである。ますます、一人一人の「患者としての力」が重要になる。

【プロフィル】永井弥生 ながい・やよい 医療コンフリクトマネージャー。医学博士/皮膚科専門医。山形大医卒。群馬大学病院勤務時の2014年、同病院の医療事故を指摘し、その後の対応に当たり医療改革を行う。群馬県出身。

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