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新栄運輸/庄内映画村 映画ロケ地誘致も採算維持できず

 ▼新栄運輸 新栄運輸は10月19日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。

 東証1部上場の日新の持ち分法適用会社で、貨物自動車運送業のほか、同社の事業所である川崎化成品油槽所で構内作業も請け負い、1991年12月期は売上高約12億1900万円を計上していた。

 近年は運送業界の競争激化を背景に、年間売上高は約8億円に縮小していたものの黒字基調を維持していた。

 しかし、不正経理が発覚し、今年10月1日付で代表取締役専務を解任。手形決済期日までに資金手当てができないことから、法的手続きによる事業再生を行うため、今回の措置となった。

 ▼庄内映画村 庄内映画村は10月15日までに事業を停止した。

 山形県庄内地方で撮影された「蝉しぐれ」のプロデュースを担当した宇生雅明社長が、地元企業を中心に出資者を募り、2006年7月に設立した。

 オープンセットの整備を進めながら、「山桜」「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」「ICHI」「おくりびと」「山形スクリーム」「デンデラ」「おしん」などの映画を立て続けに誘致。なかでも「おくりびと」が第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、一躍脚光を浴びた。

 オープンセットは09年9月より「庄内映画村オープンセット」として一般公開を開始。入場料に加え、制作会社や映画会社からのプロデュース料を柱に運営を続けてきたが、収入が低迷する中で固定費負担などを賄えずに採算割れの厳しい経営が慢性化した。

 14年にはオープンセットの管理運営を他社へ譲渡し、以降は「庄内映画村資料館」の運営のみとして事業規模を縮小していたが、同資料館も19年12月に閉館。多額の債務を抱えるなかで事業継続が困難となったことから、今回の事態に至った。

 オープンセットは「スタジオセディック庄内オープンセット」として営業を継続している。

【会社概要】新栄運輸

 ▽本社=横浜市鶴見区

 ▽設立=1954年6月

 ▽資本金=5000万円

 ▽負債額=約28億円

【会社概要】庄内映画村

 ▽本社=山形県鶴岡市

 ▽設立=2006年7月

 ▽資本金=6100万円

 ▽負債額=精査中

 〈チェックポイント〉

 新栄運輸は代表権を持つ役員が解任されるという異常事態の末の倒産劇となった。背景には不正経理があり、多額の簿外債務の存在も取り沙汰されている。上場企業からの出資を受け、豊富な実績と盤石な信用があっただけに、関連会社も含めた突然の破綻という落差は大きく、業界関係者の関心度は高い。

 庄内映画村は設備投資に見合う集客につながらず、採算を維持できなかった。映画やドラマのロケ地を誘致して脚光を浴び、経済効果を生むケースが増えている。地域振興にもつながる大きな可能性を秘めているが、一過性のブームに終わらせないためには、官民が一体となった粘り強い取り組みが不可欠だ。(東京商工リサーチ常務情報本部長 友田信男)

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