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中国では粗悪品も 「和歌山梅酒」ブランド保護へGI取得 (1/2ページ)

 生産量が日本一の和歌山県産の梅を使用した「和歌山梅酒」が今年9月、地域の飲食品ブランドを保護する国の「地理的表示(GI)」を取得した。近年の日本食ブームで海外でも梅酒の人気が高まる一方、中国などでは日本の梅酒に似せた粗悪品も横行している。GIを取得することで国内外で模倣への罰則が強化され、関係者は「和歌山梅酒をシャンパンのような世界的ブランドにしたい」と願う。(前川康二)

 原料は和歌山の梅に限る

 「和歌山が誇る本物の梅酒を世界に広げたい」

 今月5日、和歌山県庁で開かれた梅酒の審査会で、老舗酒造会社「中野BC」(同県海南市)の中野幸生会長は訴えた。

 GI取得は中野BCが呼びかけ約30事業者が賛同。製造には独自基準を設け、梅は県内で収穫された新鮮な青梅か完熟梅のみ▽梅を酒類1キロリットルあたり300キログラム以上使用▽浸漬や貯蔵、容器詰めは県内で-などと細かく規定した。審査で69銘柄が合格し、今月から順次、GI取得のロゴが貼られて出荷される。

 「和歌山の梅本来の味と風味が楽しめる。他の産地のものと決定的に違う」と事業者の一人は胸を張る。

 神戸ビーフも登録

 GIは生産地と深く関わる農林水産物や食品の名称を知的財産として保護する国の制度。認証されればロゴマークを表示でき、ブランド価値が向上する。酒類では9月末時点で和歌山梅酒を含め13品目が登録。「神戸ビーフ」(兵庫県内)や「三輪素麺(そうめん)」(奈良県全域)、「夕張メロン」(北海道夕張市)などがある。

 産地がGIを取得する背景には、産地を不正表示した偽物の横行がある。農林水産省の調査では昨年度、神戸ビーフ関連で99件、夕張メロン関連で41件など計147件の不正を確認。中国系の通販サイトなどで多く見つかったという。

 GIを取得することでブランド価値が上がり、模倣されやすくなる恐れもあるが、一方で、法的保護の対象にもなる。国内で不正表示をした場合、地理的表示法に基づき、団体には3億円以下の罰金、個人にも5年以下の懲役や罰金といった重い罰則がある。

 海外でも、欧州連合(EU)と互いにGI取得品リストを交換しており、EU加盟国全体で日本のGI取得品が保護される。違反への罰則は各国の法制度に委ねられるが、農水省の平成30年度の報告書によると、たとえばスペインでは3段階のレベルに応じた罰則を規定。第三者によるGI名称の不正使用は最も重いレベルで、罰金3万~30万ユーロが科せられる可能性がある。

 輸出、10年前の4倍に

 一方、梅酒の需要は近年、特に海外で高まっている。国税庁によると、梅酒を含むリキュール類の輸出額は昨年64億4千万円で、10年前の14億8500万円から4倍以上に増えた。

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