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車生産回復、休止高炉を再稼働 鉄鋼大手、中長期的需要減は不可避

 鉄鋼大手が、一時休止していた高炉の再稼働に踏み切っている。新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ自動車の生産などが回復しているためで、各社とも早急にコロナ前の生産水準を取り戻したい考え。もっとも、今年の国内粗鋼生産量は51年ぶりの低水準となる見通しで、中長期的にも人口減などで減少は避けられそうになく、今後も厳しい状況が続きそうだ。

 最大手の日本製鉄は、14基中5基の高炉を一時休止しているが、そのうち6月に止めた東日本製鉄所君津地区(千葉県君津市)第2高炉について、11月下旬ごろの再稼働を決定。7月から改修工事に入っている室蘭製鉄所(北海道室蘭市)の1基についても同時期に稼働を再開する。今回の再稼働で、残りは瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)第2高炉や関西製鉄所和歌山地区(和歌山県和歌山市)第1高炉など3基となる。

 8基を保有するJFEスチールも、休止していた西日本製鉄所福山地区(広島県福山市)第4高炉の稼働を9月中旬に再開。当初は10月下旬の再開を計画していたが、需要回復を受け前倒ししたという。福山の再稼働で、休止中の高炉は改修工事中の同製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)第4高炉のみとなった。

 高炉への送風を停止し、再稼働が可能な状態で一時的に止めることを「バンキング」と呼ぶ。高炉は24時間365日の稼働を前提としており、バンキングの実施は設備に負荷をかけるほか、再稼働には早くても3週間程度かかるが、コストを浮かせられるメリットがある。

 経済産業省によると、国内粗鋼生産量は4~6月に前年同月比30.6%減の1811万5000トンと激減。今年1年間の生産量も前年比17.2%減の8217万8000トンまで落ち込み、リーマン・ショック直後の2009年(8753万トン)を下回り、1969年(8217万トン)以来の低水準となる見通しだ。

 仮にコロナ禍が収束し、一時的に需要が戻ったとしても、人口減や中国勢の台頭、米中貿易摩擦などで厳しい環境が続く見通し。日鉄の橋本英二社長は「(年間の国内粗鋼生産量が)1億トンに戻ることはない」と予測する。

 日鉄は中長期的な需要減を見据え、呉地区の全面閉鎖や和歌山地区第1高炉の完全休止を決定済み。両拠点の休止高炉の再稼働は難しい判断を迫られそうだ。(井田通人)

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