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異業種3社、製造業のDX推進 富士通・ファナック・NTTコム

 新会社を来月設立

 富士通、工作機械大手ファナック、NTTコミュニケーションズの3社は7日、中小製造業などのデジタル化を支援するための共同出資会社を11月に設立すると発表した。取引や設計に関するデータを蓄積してAI(人工知能)で分析できる機能などを安全性の高いクラウドサービスとして提供する。政府が官民のデジタル化を目玉政策に掲げて一気に推進する中、出遅れている製造業や中小企業を後押しする。

 共同出資会社「DUCNET(ディーユーシーネット)」(東京)は資本金2億5000万円で、富士通が40%、ファナックは30%、NTTコムが30%出資する。来年4月からクラウドサービスの提供を開始し、3年以内に300社への提供を目指す。まずはファナックがサービスを活用して先行事例をつくる。富士通が全般的なシステムを、NTTコムがネットワークをそれぞれ提供する。

 新型コロナウイルスの感染拡大や米中摩擦の激化で製造業を取り巻く環境は厳しさを増しており、デジタル技術でビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は生き残りに欠かせない。7日に会見した富士通の藤原克己理事は「3社の強みを持ち寄って製造業のDXに貢献する」と強調した。

 提供するのはデータを安全に管理するプラットフォーム(基盤)のほか、企業が共通して使えるソフトウエアや、企業同士が売買できる電子商取引(EC)サイトなどだ。こうした機能を使うことで社内業務の効率化・高度化や新たなデジタルビジネスの創出につなげてもらう。

 「企業が単独でシステムを構築する投資には限界がある。共通利用化が必要だ」と藤原氏は指摘する。このクラウドサービスの利用料は従業員10人程度の企業で月数万円と自社でシステムを構築するより費用を抑えられる見込みで、その分を新事業創出への投資に回すことなどもできそうだ。

 電機、機械、通信業界の大手3社がデジタル化支援で協業する背景には「製造業の工場や現場でDXが進んでいない」(藤原氏)ことに対する危機意識の高まりがある。中でも遅れているのが中小企業だ。

 東京商工会議所が2019年9~10月に実施した都内の中小企業8525社を対象にしたアンケートでは、ITツールを活用していると回答したのは全体の55.7%にとどまった。従業員数人規模の事業所の多くでは、取引先とのやり取りは電話やファクスが中心で、経営者が高齢であるほど「どうしてITが必要なのか分からない」との声も少なくない。一方で、在宅勤務などのリモートワークの普及や生産性向上を目的とした働き方改革の一環で、中小企業にもデジタル化の波が押し寄せている。(万福博之、松村信仁)

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