宇宙ベンチャーのPDエアロスペース(名古屋市緑区)は、沖縄県宮古島市にある下地島空港を、宇宙旅行の拠点にすることを決めた。空港を管理する県と空港の利活用について今月10日に基本合意。今後、さまざまな企業と連携し、格納庫の整備や宇宙旅行に対応する訓練事業などに使用し、空港周辺を宇宙航空産業の新たな集積地として開発を進める。
沖縄本島から約320キロ離れた下地島空港は長さ3000メートルの滑走路を持つ。格安航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパンが乗り入れており、高度な航空管制機能が備わっている。また台湾や東南アジアからの利用客も取り込めるなど、地理的優位性があると判断した。
同社は高度10キロを飛行する無人宇宙航空機の開発を進めており、今年12月から下地島空港で飛行試験を実施する計画。並行して格納庫の建設に取り掛かり、来年8月頃の完成を目指す。
その後、高度100キロの飛行を目指す無人宇宙航空機の開発を進めるとともに、格納庫を増設し、外国製の宇宙航空機の誘致を図る。さらに宇宙旅行に備えた訓練施設や見学設備なども整える。一連の設備投資額は数十億円規模となる見通し。
PDエアロスペースの緒川修治社長は「単に宇宙旅行の出発点としてだけでなく、科学教室、公開実験など、子供たちが先端技術に触れ合う機会をつくり、それをビジネスにつなげたい」と語った。
宇宙航空機が離着陸できる拠点となる「宇宙港」をめぐっては、2011年に米ニューメキシコ州に誕生したのを皮切りに世界各地で次々と開港。日本では、米ヴァージン・オービット(カリフォルニア州)が航空機を使った人工衛星の打ち上げ拠点として大分空港(大分県国東市)の活用を決めている。
PDエアロスペースは07年に設立。ANAホールディングスやエイチ・アイ・エスなども資本参加。純民間による宇宙航空機の開発に取り組んでおり、25年の有人宇宙飛行を目指している。