新型コロナウイルスの感染拡大を受け、室内を換気しながら室温を調整できるダイキン工業の家庭用エアコンが注目を集めている。感染対策として換気の重要性が増す中、高価格帯ながらも昨年を上回るペースでヒット。この機能はダイキンの独自技術だが、空気が乾燥する冬季に室内を加湿する目的で19年前から搭載されていた。業界唯一として生き残ってきた機能が新型コロナで再び脚光を浴びた格好だ。(山本考志)
1・5倍の売り上げ
「換気や空気の質に対する消費者の関心の高まりをとらえ、今ある商材をフルに活用して徹底的に売っていく」
ダイキンの高橋孝一常務執行役員は4日、大阪市内で開いた令和2年4~6月期連結決算の発表会見で、今後の戦略についてこう強調した。
ダイキンの家庭用エアコンの主力モデル「うるさらX」は、通常の製品と同様に室内の空気を冷やしたり温めたりするだけでなく、室外機を通じて屋外から新鮮な空気を取り入れながら室温や湿度を調整する機能を備えている。
6月ごろから配布している製品カタログの表紙にも「換気しながら冷房できる唯一のエアコン」と大々的にアピール。定価が6~29畳向けで37万~84万円と家庭用エアコンとしては高価格帯ながらも、4~6月期の販売台数は前年同期比で1・5倍に伸びた。
「おまけ」が主力に
新型コロナの感染対策として、厚生労働省は密閉空間をつくらないよう定期的に窓を開けたり、換気扇を使用したりすることを呼びかける一方、夏季は熱中症の原因となる室温の上昇を防ぐため、換気とともにエアコンの設定温度を下げることを推奨している。
感染と熱中症対策を同時にできることになるダイキンの換気機能。実は平成13年から搭載されている。
冬季に使用すると室内が乾燥するエアコンの弱点をなくそうと、ダイキンは外気の水分を取り込みながら運転する機能を開発した。あくまで加湿することが主の目的で、換気できるという要素は「おまけ的なもの」(同社幹部)だったが、今回の新型コロナ禍では業界唯一となるメインの機能として売り出されることになった。
ダイキンはホームページで住宅などでの適切な換気方法を紹介しており、「在宅勤務や外出自粛で自宅で過ごす時間が増える中、健康的で快適な空気を提供するための製品や情報を届けていきたい」(広報)と強調する。
ダイキンによると、エアコン使用中の換気は新型コロナの感染対策だけでなく、室内から二酸化炭素やホルムアルデヒド、ハウスダストなど人体に有害な物質を排出するためにも極めて有効という。