新型コロナウイルスの感染拡大で対面の接触や行動が制約される中、損害保険大手各社が、学生の採用活動に向けたインターンシップ(就業体験)の仕組みをネット完結型に大きく転換している。損害保険ジャパンはより多くの学生が参加できる半日のプログラムを作成、東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険は、ネット上でも実体験に近い内容を経験できるように工夫を凝らす。2022年春卒業予定の学生向けの夏のインターンシップ真っただ中の今、企業の採用活動は「ウィズコロナ」時代への変革を迫られている。
より多い学生と接点
損保ジャパンは8月、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使った「半日型」のワークショップ「SOMPO Web College」をスタート。9月半ばまで17回開催し、計4000人程度の参加を見込む。
例年この時期は本社(東京都新宿区)や全国各地でインターンシップのプログラムを実施していたが、今年は対面型を見送り、初めてWeb方式での開催に踏み切った。昨年と同じ3日間の内容をネット上で実施するのは学生に苦痛と判断、プログラムの一部を半日に凝縮し、「より多くの学生と接点が持てる」(人事部)Web方式のメリットを生かせるよう配慮した。さらに対面の内容に近づけるため、業界・企業説明、保険金サービス部門の実務を体験するグループワークに加え、若手社員との座談会にも1時間を割き、会社の雰囲気を直接伝える内容とした。
同社では秋・冬に実施予定のインターンシップもWebでの「半日型」一本に絞る方針だ。
東京海上日動、三井住友海上もWebによるインターンシップの充実に知恵を絞っている。
東京海上日動は東京エリアでは、8月末から9月上旬にかけて3日制で3回開催し、260人が参加。「Webでもクオリティは下げない」(人事部)こだわりから対面型だった昨年同様「現場受け入れ型」でプログラムの内容もほぼ変えず、8人程度のチームに分け、計40部署が学生を受け入れる。
社員と語る場設け
国内ビジネスのコースはWeb上で実際に担当者に同行して取引先を訪問し、企画書・提案書を作成する体験も入れた。チームには助言役のメンターとして社員1人が付き3日間フォローするほか、さまざまな層の社員と交流できるようにプログラムの間には必ず社員との座談会を開く。また、在宅勤務中の社員がチームを受け入れ、リモートワークでの働きぶりに直接触れる機会も設けた。ある部署ではWeb開催で実際に訪問できない本店(東京都千代田区)内を案内する社内ツアーを企画したという。
三井住友海上は、Zoomを使って首都圏では9月中旬まで計7回開催、710人が参加する。グループワークを中心に4日間の日程で、学生がモチベーション(動機付け)を保ち集中して臨める工夫を織り込んだ。
グループには21年度採用の内々定者が日替わりでメンターとしてアドバイスし、初日と最終日にはリモートランチの場を設け、就職活動全般の相談にも乗る。最終日には「損害保険の未来を考える」をテーマに全16グループを4ブロックに分け、新たなビジネスモデルについてプレゼンテーションで競い合う。予選を勝ち抜いたグループは決勝戦に進み最優秀グループを表彰する内容で、学生のやる気を引き出す。
一方、あいおいニッセイ同和損害保険はWeb方式と対面の選択制を採り入れた。対面型は東京、大阪、名古屋で9月11日までに17回開催するが、新型コロナ対応で、昨年の3日間の内容から1日だけの「ワンデー」開催に短縮する。このため、より多くの学生が参加できるよう8月と9月25日にWeb方式でも開催。2時間のライブ配信型のセミナーにより業界と同社への理解を深めるプログラム編成とした。
各社とも応募者はおおむね予想を上回る状況のようだが、コロナ禍で就活への不安や焦りを抱える学生が多い中、企業側の採用活動にも一層の工夫が求められそうだ。(鈴木伸男)