としまえんではこの日、新型コロナウイルス対策で事前予約制となっていたチケットが完売。平日にもかかわらず、リピーターらで終日にぎわった。
「今月7回目です」。午前10時の営業開始前に訪れた東京都練馬区の主婦、計良香織さん(34)は声をはずませた。幼少期から家族や友人と何度も訪れたとし、「地元感や昭和な雰囲気が落ち着く」。最後の日は2人の子供を学校や保育園に送り届けた後にママ友と訪れた。「子供の迎えまで時間はないけれど、最後のとしまえんを楽しみたい」と笑顔を見せた。
小学1年の娘と訪れた会社員の女性(37)は昨日も訪れたといい、「夜の花火を見て泣いてしまった。友人や家族と来たこと、結婚記念日に夫とジェットコースターに乗ったことなどいろいろ思い出して…。終わってしまうと思うと寂しい」。
としまえんは実業家の藤田好三郎が所有地を開放し、大正15年に一部開園。昭和2年に全面開園した。先の大戦で一時閉園したが、21年に再開。世界初の流れるプールなどで話題を集め、平成4年度には入園者数が最多となる約390万人を記録した。
この日は夕暮れになっても入園者が絶えず、シンボルだった回転木馬「カルーセルエルドラド」には長い列ができた。午後5時すぎには、待機列を打ち切るプラカードを掲げるスタッフの姿もみられた。
練馬区の会社員、猪瀬律子さん(54)は夫婦で園内の思い出の場所をめぐり、エルドラドの列に並んだ。「若い頃から好きでよく乗っていた。タイムスリップするような感覚が非日常的で素敵。今回が最後だと思うので、夢の世界を感じたい」と話していた。
夜にはセレモニーが行われ、多くの人々に惜しまれながら1世紀近くの長い歴史に幕を閉じた。