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Jリーグスポンサーに変化 広告で露出工夫、企業と価値向上へ

 新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けたスポーツ界にあって、サッカーJリーグは無観客試合を経て観客数を大幅に減らす形で再開した。開催形態の変容はスポンサーの在り方にも変化をもたらしている。

 6月27日、J2の約4カ月ぶりとなる一戦を無観客で実施した甲府市の山梨中銀スタジアムのバックスタンドにはテレビ視聴者向けに100枚以上の広告幕が並んだ。甲府の営業担当、佐々木大喜氏は「お客さまが来場されない中、どのように張り出したらスポンサーさまの露出を増やすことができるかを考え、掲出した」と話す。

 スポンサーからも「工夫して露出を多くしようとしてくれた」と感謝された。それでも観客数が制限されて従来の「広告・露出」の機会は減り、商品やサービスをアピールするブースを出店できないのも痛手だ。

 そうしたコロナ禍で増えつつあるのがクラブの影響力を利用して企業や地域の課題解決、価値向上をともに目指す「共創」のスポンサー活動だ。J1のC大阪は7月4日の無観客試合で食事宅配大手「出前館」と組み、自宅観戦するサポーターが出前館を利用すると500円が値引きされるイベントで新しい観戦スタイルを打ち出した。

 スポンサーの駐車場シェアサービス「akippa」とは競技場への移動で発生する混雑を分散し、3密を回避させる計画も始めた。競技場や選手、ファンなどC大阪が持つ資産を利用した企業の顧客開拓へ取り組む。

 J1名古屋では7月にトヨタ自動車など複数のメーカーの協力を得て、マイカーに乗ったまま大型スクリーンで試合を観戦できる「ドライブインパブリックビューイング」を実施。約200台が集結し、感染リスクを避けた車内から声援を送った。愛知県豊田市の「クルマの街」らしさを出せるイベントとして、企業からも好評を得た企画になった。

 電力会社をKDDIへ変えた人に、チームの入場券などが契約特典として当たる「グランパスでんき」も開始するなど、名古屋の営業部に所属する大内田勇貴氏は「スポンサー企業の看板だけを売る時代は終わったねと僕たちは話している」と語る。

 スポーツスポンサーシップに詳しい帝京大の川上祐司教授はこうした取り組みは企業側にとってメリットを計算しやすいとし「コロナが契機となってスポーツ界でどんどん増えていく」と分析する。前例のない経済危機にもチーム、企業、地域一体となってしぶとく新たな取り組みを生んでいきそうだ。

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