国内塗料最大手の日本ペイントホールディングスは21日、筆頭株主であるシンガポールの塗料大手ウットラムグループの傘下に入ると発表した。ウットラムが日本ペイントの実施する第三者割当増資を引き受け、持ち株比率を現在の約39%からグループ会社が所有する持ち株と合わせて58・7%に高める。取得総額は約1兆3千億円。来年1月1日の買収完了を目指す。
日本ペイントは今回の増資で調達した資金で、ウットラムと展開しているアジア各国の合弁事業と、ウットラムのインドネシア事業を買収する。これにより、塗料事業をウットラムから技術力のある日本ペイントに集約。アジアで住宅や自動車、道路などのインフラ向けに拡大している塗料需要の取り込みを狙う。
日本ペイントはウットラムの塗料事業を引き継ぐことでアジア市場で存在感を高めたい考えだ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、抗ウイルス塗料を開発することも視野に入れている。
一方、ウットラムは株主として日本ペイントの成長に伴う利益を享受する狙いがある。
ウットラムは2013(平成25)年、日本ペイントにTOB(株式公開買い付け)による事実上の買収を提案。ウットラムはその後、提案を撤回し、第三者割当増資などで出資比率を高め、取締役も送り込むなどして協業を進めてきた。
日本ペイントの田中正明社長は21日にオンラインで記者会見を開き、「ウットラムの株式取得は資本政策の結果で、過半数を取るための取引ではない」と説明した。
ただ、議決権の過半を握られるため、経営戦略や人事で独立性を保つことが難しくなる局面もありそうだ。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープ買収などに続き、アジア企業による日本の巨大メーカー買収が素材分野にも及んできたといえそうだ。
日本ペイントの令和元年12月期連結決算は売上高が6920億円、最終利益は367億円だった。アジア事業の買収により最終利益は約6割の増加を見込む。