ITなどの専門家がチームを作って技術やアイデアを持ち寄り、短期間でアプリやサービスなどを開発して成果を競う「ハッカソン」というイベントが国内で急増してきた。オンラインでも実施できるのが強みで、新型コロナウイルスのリスクと共存しつつ快適な日常を送るための新たなアイデアが次々と生まれている。企業もハッカソンは大きな商機につながるとして注目する。
ハッカソンは英語の「ハック」に「マラソン」を組み合わせた造語。京都市で6月に開催された「ジャパン・ハッカソン」には世界40カ国・地域から約260人が参加。コロナ禍で普及したテレワークの課題を洗い出し、ストレスを感じることなく自宅でいかに快適な作業ができるか、参加者が知恵を競い合った。
起業に関心のある京大生らで構成する「京大起業部インターナショナル」(KUIEC)が企画。当初は観光や健康などをテーマにする予定だったが新型コロナの影響でテーマを変更し、形式も対面からオンラインに変えた。
賞金50万円の「京都府賞」には、学校が休校になり家で孤立しかねない子供や、先生を支援するシステムを提案したフランスやイタリア、マレーシアなどの多国籍チームが選ばれた。生徒と先生をオンラインで結び、問題が分からずに悩んでいると別の生徒が加わって一緒に問題を解いていく仕組み。全体を見る先生は取り組みが遅れている生徒にオンライン上で寄り添ってアドバイスできる。チーム代表者は「実際に学校で実証実験をした上で市場に出したい」と早期の事業化に意欲を見せた。
企画に携わったKUIECの赤城賀奈子代表は「シンガポールから10歳の子供が参加するなど、オンラインだからこそ実現できたことが多くあった。やる気とアイデアがあれば、誰もが世界を舞台に競い合うことができると証明できた」と確かな手応えを感じていた。
ハッカソン開催は各地でも相次いでいる。今年3月には無料通信アプリLINE(ライン)を活用したアプリ開発に興味があるエンジニアたち約30人が新型コロナをテーマにオンラインハッカソンを開催した。また名古屋市は7月から「新型コロナウイルスで変わる世界に新たな価値を創出せよ!!」をテーマにしたイベントを遠隔開催。約60人が参加した。
ヤフーでハッカソン運営を担当する中村友一氏は「ハッカソンは1990年代後半に米国で始まり、日本は2010年代に広がった。オンライン開催には壁もあるが、コロナ禍でハッカソンを通して新たな案を探る動きが加速するだろう」と期待を寄せた。
【用語解説】ハッカソン
新しいソフトウエアやアプリなどの開発手法の一つで英語の「ハック」に「マラソン」を組み合わせた造語。短期間に集中作業をするのが特徴。プログラマーやデザイナーなど異業種の専門家による新商品やサービス開発の場として知られている。起業家を育てる人材育成の一環としても注目されている。