相続と事業承継の問題を解決する提案型税理士法人のアイユーコンサルティングは、中小企業の経営を財務的視点から支援する「MAS(マネジメント・アドバイザリー・サービス)監査」に乗り出した。6月から業務を開始し、既に5社から受注。年末には15社まで増やす。「5年後には100社と契約し、売り上げ1億円を目指す」と意気込む岩永悠代表に現状と展望などを聞いた。
未来の会計サポート
--MAS監査とは
「顧問税理士は過去の会計から経営支援を行うのに対し、MAS監査は未来の会計をサポートする。経営理念やビジョンを策定し、会社・部門・個人単位での具体的な目標や行動計画に落とし込み、予算と実績の差異を把握。未達、達成にかかわらず、その要因を検証し、ボトルネックの改善、アクションプランの見直しで目標を達成する」
--会社の未来がつくれる
「PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルによる好循環経営で未来をつくるのがMAS監査だ。『商品力があるのに利益に結びつかない』といった問題に、第三者の目でモニタリングし目標を達成できる経営体質づくりをサポートする。CFO(最高財務責任者)がいない会社には社外CFOとして、いる会社にはCFOの知見を広げる手伝いとサポートを行う。経営者と伴走して利益が出る体質をつくるビジネスなので楽しい」
--そのために必要なことは
「経営を学ぶため、6月から東京・日本橋の京都大学経営管理大学院『上級経営会計専門家(EMBA)プログラム』のリモート教育を受けている。12月に修了する予定だ。スタッフは役員による自社研修のほか、日本BIGネットワークなどが行う実務型研修や座学などを通じて学んでいる。均一で高い品質のMAS監査を提供するためだ」
--提供先は広がりそうか
「会社を伸ばしたい、強くしたいという中小企業は多いが、われわれだけでは裾野は広がらない。中小企業を成長させることが目的なので、提携する約100の税理士事務所にMAS監査を紹介・提案していく。まずは社内体制づくりが先なので周知活動はこれから。5年後には提携事務所を含め1000社程度にMAS監査を広げたい」
調達先再編で改善
--中小企業の未来をつくるサービスとして他には
「資金調達・キャッシュフローの安定化、最適化を目指す『財務コンサル』を始めた。財務の現状分析と課題抽出からスタート。調達先の再編による財務改善と資金繰りの安定化を図り、利益・運用・資金計画策定と毎月のモニタリングを経て体質改善に取り組む。新型コロナウイルスの感染拡大が続く4~6月で15件程度受注し、金融機関に対し融資対応や金利交渉、借り換えなどを行った。財務コンサルはスポット業務で当面は毎月2、3件程度の受注を目指す」
--課題は
「社員数を現状の58人(このうち税理士16人、会計士2人)から、2024年4月に100人(それぞれ35人、5人程度)に増やしたい。そのためには業界での認知度向上が不可欠。中途採用を増やすには税理士事務所のビッグ4といわれる大手への周知が必要で、そのために書籍などの出版や経済メディアへの露出などを積極的に行っている。また新卒採用を開始し、初年度の20年4月は2人が入社し、来年4月は5人に内定を出した」(松岡健夫)
【プロフィル】岩永悠
いわなが・ゆう 西南学院大経済学部卒。九州の中堅税理士法人などを経て2013年岩永悠税理士事務所(現税理士法人アイユーコンサルティング)設立し代表。37歳。長崎県出身。
【会社概要】アイユーコンサルティング
▽所在地=福岡事務所(福岡市博多区)、北九州事務所(北九州市小倉北区)、広島事務所(広島市東区)、東京事務所(東京都豊島区)、埼玉事務所(埼玉県川越市)
▽設立=2013年4月1日
▽社員数=58人(このうち税理士16人、会計士2人)
▽事業内容=相続対策や事業承継、M&A(企業の合併・買収)などのコンサルティング、税務顧問、組織再編支援など