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企業雇用維持に近づく限界 新型コロナ再拡大で続く業績不振

 緊急事態宣言が解除された6月の完全失業率は、前月からわずかに改善した。だが企業の求人は新型コロナウイルス感染拡大の影響で減少傾向が続き、雇用情勢の改善は一時的との見方が強い。政府は助成金の拡充などにより企業が従業員を解雇や雇い止めにしないよう雇用維持に注力するが、企業の体力は限界に近づいている。

 客足戻らず店閉鎖

 「使い捨てにされた」。パートとして5年以上勤めた東京都内のリサイクル婦人服販売店を7月末に退職した女性(53)は憤る。店は4月上旬から休業し、6月に営業再開した。だが客足が戻らず7月末で閉鎖に。女性を含むパート全員が「応じなければ解雇する」と退職を迫られた。

 休業前の手取り月収は約18万円だったが、5月の手取りは約5万円。メールで明細が届いただけで根拠の説明はなし。会社に改善を求めようとした6月下旬、業績不振による店舗縮小を突然告げられた。

 働くのが好きで仕事にやりがいを感じていた。今後は就職活動をする予定だが「50代という年齢が引っかかるかもしれない。感染症の影響も心配」と不安を抱える。

 政府はこれまで「雇用調整助成金」を最大限に拡充するなど、雇用維持を最優先に政策を打ち出してきた。短期的な効果は顕著に表れ、5月に休業していた423万人のうち約半数が6月も休業を継続する一方、残りの半数近くは仕事を再開。同月の完全失業率は7カ月ぶりに改善した。

 だが雇用情勢はじわじわと悪化している。総務省の6月の労働力調査では、勤め先の都合で離職した人は41万人に上り、前年同月に比べ19万人増加。特に非正規労働者への影響が大きく、企業に雇われている人(役員を除く)は前年同月から104万人減った。

 自粛期間中は求職活動していなかった人たちが活動を始め、求人を控える企業の動きとずれも生じている。厚生労働省によると6月の有効求職者数は前年同月から3.5%増えたのに対し、企業の有効求人数は同比マイナス28%だった。

 行政が臨時交付金を

 7月以降は新型コロナウイルス感染が再拡大し、先の見通しは厳しさを増す。深刻だった人手不足の経験から、多くの企業は人材を確保しておこうと努めるが、経済活動の萎縮が続くと早晩限界がくる。

 雇用問題に詳しい東京大の玄田有史教授は今後の状況について「厳しさを増す可能性がある」と指摘し、雇用維持だけでなく失業対策として、行政による臨時の雇用創出を訴える。「地方創生臨時交付金を活用するなどして、自治体が地域独自の雇用を生み出す必要がある」と強調した。

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