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九州新幹線 長崎ルート、23年度着工に暗雲 佐賀県がアセス反対崩さず

 九州新幹線長崎ルートのうち、整備方式が定まらない佐賀県区間(新鳥栖-武雄温泉)をめぐり、与党が目指す2023年度末ごろの着工に暗雲が垂れ込めている。工事に先立つ環境影響評価(アセスメント)は2~3年かかると見込まれるが、県が反対姿勢を崩していないためだ。着工が遅れれば、新幹線と特急を乗り継ぐリレー方式が長期化しそうだ。

 長崎ルートは博多駅(福岡市)から佐賀県の新鳥栖を経由、長崎駅(長崎市)までを結ぶ。このうち武雄温泉-長崎はフル規格の新線を建設。新鳥栖-武雄温泉は当初、在来線を活用し、新幹線も走行できるフリーゲージトレインを導入する計画だったが、車両開発が遅れ、与党は全線フル規格化に方針転換した。

 国土交通省の試算によると、フル規格化した場合の建設費は約6200億円。ただ、約660億円の負担を強いられる佐賀県が反発している。

 こうした中、武雄温泉-長崎は22年度の暫定開業が迫る。当面は武雄温泉駅の同じホームで、在来線特急と対面で乗り換えるリレー方式を採用し、博多とつなぐ。

 事態打開を目指す国交省は6月、フル規格や、線路を在来線規格で造るスーパー特急など5方式に対応するアセスを提案した。通常は1つに絞ってから実施するが「アセスを先行し、その間に整備方式を議論すれば、結論が出てから速やかに建設に着手できる」(担当者)と、異例の対応に踏み切った。

 国交省は、8月にアセス手続きに入らなければ、目標通りの着工が難しくなるとしている。近く県との事務レベル協議を開催し、理解を求めるが、県側に態度を軟化させる気配はない。

 国がアセスを急ぐ背景には、建設費の財源問題もある。北陸新幹線敦賀-新大阪は23年度の着工を目指してアセスが進行。与党を巻き込みながら、長崎ルートとセットで財源にめどをつけたいとの思惑がある。

 国交省幹部は「北陸が先行すれば長崎ルートは置き去りにされ、財源確保が難しくなる」と指摘。早期整備を求める長崎県も「完成時期が大幅に遅れる」(中村法道知事)と危ぶむ。

 一方の佐賀県は、国交省の提案はフル規格狙いと警戒。山口祥義知事は「話にならないというのが(県庁の)共通した意見だ」として、整備方式を決めてからアセスを実施するよう求めている。

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