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利用率31年全国1位の国民宿舎 茨城「鵜の岬」の魅力に迫る

 国民宿舎協会は、国民宿舎「鵜の岬」(茨城県日立市)の令和元年度宿泊利用率が全国69の国民宿舎の中で、31年連続1位だったと発表した。今夏は新型コロナウイルスの影響で、鵜の岬も団体客は大幅に減ったが、それでも個人客でほぼ満室という人気ぶり。民間シンクタンクの都道府県別魅力度ランキングでは、7年連続最下位の茨城県で、31年間不動の利用率日本一を貫く国民宿舎。その魅力に迫った。

 ロケとグルメ

 令和元年度、鵜の岬の宿泊利用率は82・9%。次いで「サンロード吉備路」(岡山県)の66・4%、「いわき荘」(青森県)の59%と続き、2位以下を大きく引き離した。鵜の岬の宇佐美泰重支配人は「太平洋を一望できる客室、地元食材中心の料理、そして心からのおもてなしが結果につながった」と分析する。

 鵜の岬の客室は、大きな窓に一面の太平洋が映る。海と山に挟まれた部屋は静寂に包まれ、朝は波の音で目が覚めるほど。大浴場ではサラサラな温泉に身を委ねて太平洋を一望でき、手軽な非日常を体験するにはうってつけのロケーションだ。

 食事では、海と山の幸に恵まれた茨城の魅力を生かし、県産のブランド豚や常磐沖でとれる「メヒカリ」など地元特産品を中心に、季節ごとに旬の食材が並ぶ。全国にはあまり出回らない地元酒蔵の日本酒もファンにはたまらない。

 茨城弁でおもてなし

 「『茨城の宿に来た』という特別感を味わってもらいたい」と宇佐美支配人は力を込める。スタッフ全員が心に留めているのは「田舎のおもてなし」だ。案内や会話には茨城弁を交え、和室の宿泊客には靴磨きのサービスもある。駐車場のお出迎えから始まり、車のお見送りに終わる。そんな田舎のおもてなしを忠実に何十年も繰り返してきた。

 おもてなしの現場は若手が中心で、どこかたどたどしくも心のこもった対応が印象的に残る。年配の宿泊客にとっては「孫や子供をみているようでホッとする」と好評のようで、中には県外から親子三代にわたって利用し続けているリピーターもいるほどだ。

 現在のコロナ禍では、利用者側が密集をさけるために、6人部屋に2人で泊まるケースが増えており、宿泊客数は例年より3割ほど減っているという。とはいえ、客室自体は満室が多く、利用率31年連続日本一の魅力を物語る。県外客も減少傾向にあるが、全体の約4割を占めており、ホテル入り口にサーモグラフィの設置や検温、消毒、フェイスシールドの活用などで積極的な感染症対策を実践している。

 コロナ禍の課題

 新型コロナの先を見据えた今後の課題は、若者客の増強にある。年配の利用客が全体の約7割を占める中、今後も利用率1位を継続するためには若者へのPRも必須だ。鵜の岬では、現場を20~30代の若手に任せることで、最前線の声を若者目線でくみ上げている。7年目の根本匠さん(28)は「新商品の開発など若手の声で実現したケースがたくさんある」と胸を張り、宇佐美支配人は「ベテランでは気づけない若者の視点を積極的に組み上げ、長く愛される鵜の岬を目指したい」と力を込めた。

 ところで、鵜の岬には「常に満室で電話がつながらない」という噂がある。宇佐美支配人は「都市伝説です」と言い切る。「ピンポイントで宿泊日を選ばず、8月下旬といった広い期間を指定してくれれば意外と空きを見つけられます。ご利用お待ちしております」とのことだ。(永井大輔)

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