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プラごみ再生へ相次ぎ新技術 各社が商業化急ぐ

 循環型社会構築へ商業化加速

 使用済みプラスチックを再資源化する技術の開発が進んでいる。積水化学工業は、住友化学とともにプラごみを含む可燃ごみから汎用(はんよう)樹脂を製造する技術を開発。サントリーホールディングス(HD)や東洋紡など12社は、プラごみの再利用を目指す新会社をこのほど設立した。海洋汚染の深刻化や、7月1日にスタートしたレジ袋の有料化で、プラごみ問題への社会的関心が高まる中、各社とも商業化を急ぎ、循環型社会の構築に貢献したい考えだ。

 分別せずに樹脂作成

 積水化学と住化は、プラごみを含む可燃ごみからレジ袋などの原料となるポリオレフィン樹脂を作る技術の開発に着手した。具体的には、積水化学がごみを一酸化炭素と水素にガス化した後、微生物で分解してエタノールを生産。それを引き取った住化が、化学製品の基礎原料であるエチレンを経て、ポリオレフィンに再生する。積水化学の技術は米社と3年前に開発したもので、ごみを分別しなくても済むほか、エタノールへの変換に熱や圧力を必要としないという。

 積水化学は、以前から埼玉県寄居町の実証プラントで年20キロリットルのエタノールを生産してきた。共同開発に合わせ、官民ファンドのINCJと合弁会社を設立。90億~100億円をかけて、さらに大規模な実証プラントを岩手県久慈市に建設する計画だ。

 隣接するごみ処理施設から1日当たり約20トンの可燃ごみを譲り受け、年数百キロリットルのエタノールを生産する計画。エタノールは住化の千葉工場(千葉県市原市)に運ぶ。2021年度末に稼働を始め、25年度の本格事業化を目指す。

 日本の石油化学コンビナートで製造されるエチレンは、原油由来のナフサ(粗製ガソリン)が原料だ。積水化学と住化の技術が普及すれば、二酸化炭素を減らせる上、こうした天然資源の節約にもなるという。積水化学はエタノールを外販するほか、自治体などに技術の採用を促し、将来的に関連事業を100億円規模に育てたい考えだ。

 多種類まとめて処理

 一方、サントリーHDや東洋紡など12社は、このほど新会社を設立。27年までにペットボトルやレジ袋、食品トレーなどのプラごみを、直接原料に戻す事業に乗り出す。

 新会社「アールプラスジャパン」(東京都港区)には、大日本印刷や東洋製缶グループホールディングス、アサヒグループホールディングスなども出資。住化も参加を検討中という。

 新会社はこのほど、米バイオベンチャーのアネロテック(ニューヨーク州)に出資した。アネロテックは、さまざまな種類のプラごみをまとめて処理できる技術を開発中。既存技術に比べ、工程の一部を省ける優位性もあるという。6月30日に記者会見したサントリーHDの新浪剛史社長は「(新会社は)使用済みプラのリサイクルで技術の芽を育み、花を咲かせる」と強調した。

 日本では年間約900万トンのプラごみが処理されており、リサイクル率は約85%に達する。もっとも、大半は焼却して廃熱をエネルギーに利用する「サーマルリサイクル」で、二酸化炭素を排出することから、国際的にはリサイクルとは認められていない。プラ使用削減や代替素材開発とともに、ケミカルリサイクルによるプラごみの再資源化が進んで初めて環境先進国といえるだけに、サントリーHDの新浪社長は「画期的な技術を広く発展させ、新しい課題解決策を示していきたい」と意気込む。(井田通人)

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