金融

経営が危険な銀行ランキング ゾンビ化している機関を見極める (1/3ページ)

 純利益の増加率で本当に危険な銀行がわかる

 銀行が悲鳴を上げています。もともと、低金利による利ザヤの縮小など、厳しい経営環境に置かれていた銀行は、さらに苦境に追い込まれています。実体経済に深刻なダメージを与えている新型コロナによって、金融機関の再編を加速させることになるでしょう。メガバンクですら厳しい状況で、三菱UFJは店舗の削減計画をどんどん加速させており、19年の計画では、17年度末の515店のうち35%にあたる180店を減らす予定でしたが、さらに上乗せして4割にあたる200店舗を削減する計画を発表しています。また、三井住友銀行も22年度までに4分の3にあたる300店舗を窓口数や取扱事務を減らした軽量店舗に置き換えると公表しています。

 今回は、87銀行の財務状況を経営危険度としてランキングにしました。バブル崩壊後の銀行は、急激に財務体質が悪化して破綻に至るケースが多く、その原因は融資の不良債権化でした。これを解決するために、今の銀行は自己資本比率を分厚くしています。しかし、それだけでは、今の超低金利時代に収益を確保すること自体が難しくなっているのです。そこで、財務体質を見る際に、自己資本比率だけでなく、収益性の観点から純純利益の増加率も見る必要があります。ランキング化することで、再編の可能性がある銀行が見えてくるでしょう。スクリーニング要件はマネックス証券のスクリーニング「銘柄スカウター」を利用して選定しています。

 リーマンショックの当時、銀行で何が起きたか

 リーマンショック後、銀行の融資で何が起きたか。銀行は自己資本比率が薄くなると、企業への貸し出しリスクが取れなくなり、「貸し渋り」だけでなく、資金の回収を行う「貸し剥がし」を行いました。その反省から、2010年9月には規制内容を再検討した「バーゼル3」が公表されています。「バーゼル3」では、自己資本の「量」と「質」の見直しを柱としており、「量」では自己資本比率の水準(8%以上)の引き上げ、「質」では普通株や内部留保など、より資本性の高いものを多く保有するように示唆しています。

 今回、採用したのは3つのスクリーニング要件です。「実績ROA」である総資産利益率は資産全体を使ってどれだけ効率的に利益を生み出しているかを測る指標です。銀行の「稼ぐ力」と認識していただければよいでしょう。「自己資本比率」は上記で述べたとように、財務の健全性を測る上で重要な指標になります。「当期利益の増益率」は、自己資本比率を高めて生き延びているゾンビ化している銀行を見極めるために、収益性の柱が必要になります。ランキング表では、「純利益の増益」順に並べています。

銀行経営危険度ランキング・スクリーニング要件

▼実績ROA

▼自己資本比率

▼通期:当期利益の増益率

(マネックス証券「銘柄スカウター」より抽出:6月30日時点)

 特例法成立で地銀の合併を後押し

 5月20日に地銀の合併を後押しする法案が成立しています。これは、地方銀行同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法で、銀行業界の成長戦略のためのものではなく、経営統合や共同経営の実施を促すものだと言われています。地銀を他行との経営統合や合併に突き動かす国の方針に他ならないのです。銀行の業績が悪化して地元地域の資金繰りに支障をきたす恐れがある場合、独占禁止法を適用除外とした経営統合が認められています。超低金利や人口減少で収益が細る地銀の再編を後押しし、経営基盤の強化を狙っています。この法案によって、今後、より一層、地銀の合併の流れが強まることになります。今後は、「地銀の統廃合」と「新興勢力による手数料競争」の2つがますます進んでいくでしょう。

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