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QRコード決済の規格統一、手数料問題で連携に早くも“ほころび” (2/2ページ)

 だが、海外の事業者がJPQRに参加すれば、外国人旅行者が母国のサービスを使える店舗が増える可能性はある。JPQRのような規格統一の動きは海外でも広がっており、日本政府は統一規格を持つ国に相互乗り入れを呼び掛けることも検討している。

 フィンテック協会の丸山弘毅会長も「利用者と店舗側の双方にとって分かりやすい制度だ」と強調。その上で、新型コロナウイルスの感染拡大で人の接触を極力減らした生活が求められる中、「飲食店のテーブルにQRコードを設置したセルフ決済など新たな活用も想定される」とする。

 手数料問題が浮上

 一方、大きな課題も浮上している。店舗が決済額に応じて事業者に払う加盟店手数料について、最大手のペイペイが自社独自のQRコードを使った支払いでは無料としつつ、JPQRでは有料とすることが分かったのだ。

 ペイペイは事業開始当初から決済手数料を無料とするキャンペーンで独自に加盟店を開拓し、来年9月まで無料を続ける。しかし総務省の資料によると、ペイペイはJPQRによる支払いでは店舗から1.99%の手数料を取り、来年10月までの間、段階的に3.24%まで引き上げるという。

 ペイペイは「事業戦略上の理由」とするが、ある関係者は「店舗側にペイペイを使わせるための戦略だ」と分析する。店舗側にとっては独自QRコードでの支払いが無料であれば、JPQRの導入後もペイペイの独自QRコードを統一QRコードとは別に掲示し、利用を促すことが想定されるからだ。

 このままでは乱立するQRコードを一本化するという政策意図が揺らぎ、JPQR普及の妨げにもなりかねない。高市早苗総務相も「決済事業者にはできるだけ安い手数料率にすることをお願いしたい」と呼び掛けるが、ペイペイは沈黙を続けており、先行きは見通せない。

 QRコード決済には店舗に設置されたQRコードを読み取る方式(店舗提示型)と、利用者がスマートフォンの画面でQRコードを見せる方式(利用者提示型)の2通りがある。

 店舗提示型はQRコードを利用者がスマホで読み取り、金額を入力して決済する。導入コストが安いのが特徴で、小規模店に多い。税金の支払いにこの方式を用いる自治体も出てきている。一方、コンビニエンスストアなどが導入している利用者提示型は、スマホにQRコードを表示するだけなので、利用者にとっては利便性が高い。

 経済産業省のポイント還元策で、3月末までに使われたキャッシュレス決済のうち約16%がQRコード決済だった。(蕎麦谷里志)

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