日本銀行と金融庁は2日、CLO(ローン担保証券)に関する初の合同調査結果「本邦金融機関の海外クレジット投融資の動向」を発表した。2019年9月時点の大手行のCLOの保有額は合計13.8兆円で、3年半前の2.7倍に拡大、世界のCLOの2割弱を日本の金融機関が保有する、最大の投資家になっている。(森岡英樹)
そのCLOの流通市場である米国が新型コロナウイルスの感染拡大に加え、警察官による黒人暴行死に端を発した抗議デモに揺れている。企業の倒産も急増しており、経済の先行きが懸念されている。
企業倒産の急増は、CLOの原資産となっている貸付債権の不良債権化を通じてCLOのデフォルト(債務不履行)に波及しかねない。日銀と金融庁の合同調査はそうしたリスクへの警鐘の意味が込められている。
CLOは、投資適格未満の信用力の低い企業に対する貸出、いわゆるレバレッジドローンを束ねて証券化した金融商品で、08年のリーマン・ショックで問題となったCDO(債務担保証券)の一種だ。信用力の低い企業向けを束ねているため利回りが高く、国内に有望な投資対象を欠く日本の大手銀行がこぞって触手を伸ばした。
米国のレバレッジドローンの残高はここ10年でおよそ2倍に増加し、CLOの年間発行額も18年に過去最高を更新した。だが、最近では、レバレッジドローンの貸付先企業で、自己資本に対する借入金の割合を示す「レバレッジ比率」が上昇するなど、質の劣化が懸念され始めており、市場規模も急減し始めている。低格付け企業向け融資残高の6割を占めるCLO市場が縮小すれば、資金調達の経路が細り、CLOの元になっている貸出の焦げ付きリスクも高まることになる。
日本の金融機関は「CLOの投資では、最も信用力の高いトリプルAの格付けの商品に絞って購入しているほか、投資に当たっては商品スキームについて入念なデューデリジェンス(資産査定)を行い、裏付けとなっているローンについても米国拠点を通じて詳細なモニタリングを継続して実施している」と最大の保有額を持つ農林中央金庫の関係者は語る。
合同調査でも、邦銀が保有するCLOの99%以上がトリプルA格で、米銀(77%)、英銀(50%強)に比べ高い水準にある。かつ、ほぼ全てが満期保有で占められている。また、いわゆる「リスクテンションルール」も各国で導入されている。