一方、同じ製薬業界では小野薬品に同情的な声が聞かれる。新薬開発の成功確率は約2万6000分の1とも言われる。ある製薬会社の社員は「研究の成否が分からない中での投資は企業側にとって負担が大きい」と話す。
訴訟の動向は両者にとどまらず幅広く波及する見通しだ。東京大の玉井克哉教授(知的財産法)は「同様の主張をする研究者との連携を控える企業が出てきてもおかしくない」と解説する。
過去には青色発光ダイオード(LED)をめぐり開発者が企業を提訴した例もあり、多くの企業が対策を講じてきた。大手メーカーの担当者は「もめ事が起きないように契約を結ぶようになっていた。なぜここまでこじれたのか」と首をかしげた。
【用語解説】オプジーボ
免疫の力を利用したがん治療薬。免疫細胞は通常、がんを異物として排除するが、免疫細胞にあるPD1というタンパク質ががん細胞側に結合すると、攻撃にブレーキがかかってしまう。オプジーボは両者の結合を阻み、攻撃を続けられるようにする。皮膚や肺などのがん治療に使われ、世界の市場規模は2024年に4兆5000億円に達するとの試算がある。本庶佑京都大特別教授らは1992年にPD1を発見。小野薬品工業と共同で関連特許を取得した。