講師のホンネ

新型コロナと戦うために、非難をやめ知恵を絞るとき

 今、日本が分断され人々に怒りが蔓延(まんえん)している。新型コロナウイルスへの感染に対する未知の恐怖と個々の危機意識の差から生まれる怒りだ。新型コロナ危機に際して最も恐れるのは、見えない恐怖に支配され人々の心がすさんでいくことだ。(伊豆はるか)

 コロナで人が死ぬかもしれないのに、まだ出歩くのかと憤る人がいる一方で、経済破綻による自殺などの二次的被害の方がよっぽど深刻だと考える人がいる。どちらも、自分が正義だと信じて相手を非難する。どちらが正しいかという議論は、感情をあおって分断をさらに深刻なものにするだけだ。

 意見の相違は、人が集まれば必ず起きることであり、どの意見も本人にとって信じるに値する。異なる意見を持つ者同士、どのように共生するかを模索し歩み寄るしかない。私は、どんな意見でも「この人にとってはそうなんだ」と一旦、納得するようにしている。たとえ、私には赤に見えるペンを、黒だという人がいても受け止める。

 人が変われば、ものの見方や価値観にそれ程の差があって当然だと思っているからだ。盲目的に自分の意見を相手に押し付けることは、不要な混乱と争いを招く。反対に意見が合わないだけで簡単に「おかしい」と相手を評価しないように気をつけると、怒りも対立も抑えられコミュニケーションはスムーズになる。

 夫婦でも子供相手でも同じことだ。相手を否定するのではなく、違いを認めた上で着地点を探していく。人それぞれものの見方は異なり、その人にとっての真実もさまざまだ。だからこそ、思い通りになるはずのない他人の言動についてあれこれ考え心を乱されるのはやめて、どうしたら自分が心穏やかに過ごせるかにフォーカスしてほしい。

 新型コロナとの戦いは、マスコミやSNS(会員制交流サイト)のネガティブキャンペーンとの戦いでもある。不安や怒りに心が支配され、人を見下したり責めたりしやすくなっていることを自覚し、あくまで冷静に物事を見るときと思う。育ちも性格も、物事のとらえ方も表現も、全てが異なる個が集まり共生しているこの世界。未曽有の危機に直面したからこそ、その違いが普段より浮き彫りになっている。互いを非難し合うのではなく認め合いながら、ともにこの試練に立ち向かい、知恵を絞って行動したい。

【プロフィル】伊豆はるか

 いず・はるか 兵庫県出身。精神科医・3児の母。慶大在学中に会社を設立し、塾や飲食店を経営。社長業の傍ら医学部入学。33歳で医師免許を取得。現在は精神科医・訪問診療医として働きながら、女性の新しい生き方を提案する「マルチライフプロジェクト」を主宰。現実的かつ具体的手法で女性を導く講座は毎回満席。

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