新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、深刻な打撃を受けている観光業や飲食業などを支援しようという動きが各地で活発化している。外出自粛要請の中、返品される土産物や余った学校給食用の食品をネット販売。自粛要請解除後に利用する飲食店の料金を「先払い」する新たな仕組みも生まれている。(入沢亮輔、木下未希)
「厳しい業界の現状を知ってほしい」。こう話すのは、大阪・ミナミの観光名所「通天閣」を運営する通天閣観光の高井隆光社長。通天閣では感染拡大の影響で売れ残った各地の菓子類の土産物を半額で販売するセールを開催している。
新型コロナウイルスの感染が広がってからも、通天閣は「『地域のランドマークとしての明かりを消さないで』との声があった」と営業を続けていたが、入場客は激減。緊急事態宣言が発令された翌8日の入場客は30人と過去最低になり、9日から臨時休業に踏み切った。
一方、土産物の菓子類などは賞味期限が迫り、大量の食品ロスが出る事態になっていた。そこで取引業者に声を掛け、土産物を半額で販売するセールを3月13日に実施すると、3日間で完売。この取り組みが会員制交流サイト(SNS)のツイッターなどで話題を呼ぶと、他の取引先からも引き合いがあり、17日から第2弾のセールを実施。現在もセール販売を通天閣地下1階で続けているほか、通販も実施している。
飲食店や宿泊施設については、当面の資金を確保できるようにするという取り組みもある。福島県会津若松市のソフトウエア開発会社「シンク」は今月2日、「ふくしま先腹(さきばら)い応援団」のサイトを立ち上げた。
利用者はサイトに登録した同県内の飲食店や宿泊施設の利用券を“先払い”で購入。購入した利用券は、行政が新型コロナウイルスをめぐる安全性が十分になったと判断できた段階で利用する。サイトの登録業者にとっては先に売上金が入る仕組みで、担当者は「店にとって厳しい状況を乗り越えるお手伝いができれば」とする。