元資源エネルギー庁長官・日下部聡さんに聞く
--電力の小売り全面自由化から4年、新電力のシェアが電力量ベースで15.8%(2019年9月時点)となっている。評価は
「新電力のマーケットシェアは小さいが、潜在的な競争相手がいるというだけで料金が下がった点を評価したい。大手電力のシェアが95%に戻ったとしても、競争による牽制(けんせい)が働き、消費者には利益となる。これからは料金だけで勝負というよりも、新しい社会課題、例えば脱炭素という新しい価値での競争がより大事になる」
--新しい社会課題とは何か
「脱炭素で、かつ、災害にも強い電力システムが社会的に求められている。最近では、普段は電気を電力会社から買っているが、災害時には自分たちの太陽光発電やEV(電気自動車)の蓄電池で電力を自給する、緊急時の分散型システムが注目されている。過疎地の老朽化した配電網を、再エネや蓄電池を組み合わせたローカルな常時分散型システムに変えていく試みも始まるだろう。さらに技術が進めば、再エネ・EV・ゼロエミッションビルとIoT(モノのインターネット)での電力需給コントロール技術を組み合わせた常時脱炭素型のスマートグリッドシステムの開発も進んでいく」
--今後、電力業界はどうなる
「連携型のイノベーション競争と脱炭素技術の官民協調、この2つが重要になる。競争の仕方は『大手電力』対『新電力』という構図が大きく変わり、異業種の企業間連携、アライアンス間のメガ競争になる。スマートシティを支えるスマートグリッドをやろうとすると、電力会社が自動車メーカーや通信事業者、デベロッパー(開発業者)、総合電機などとアライアンスを組み、脱炭素ソリューションの提供をめぐってグローバルに競争する、こういう時代になるだろう」
【プロフィル】日下部聡
くさかべ・さとし 横浜国大経卒、1982年、通商産業省(現経済産業省)入省。経済産業政策局産業組織課長、大臣官房審議官、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)、大臣官房総括審議官、官房長、2015年7月から資源エネルギー庁長官。20年4月から三菱電機常務執行役。大阪府出身。