腸内環境を整えて健康を手に入れる「腸活」への関心が高まる中、サッカー元日本代表の鈴木啓太氏が社長を務めるAuB(オーブ、東京都中央区)は、日頃から健康と食事に気を使うアスリートの腸内環境に近づけるサプリメントを商品化、昨年12月の発売から約2カ月で1000人超の定期購入者を獲得し、3月には単品購入と合わせ3200個を送付した。今年末には定期購入者を1万人まで増やす考えだ。人脈を生かしアスリート仲間約500人から集めたうんち(便)を解析し特有の腸内環境を発見、健康志向の強い人の心をつかんだ。
29種類の菌を配合
「腸内が明らかに変化している」「体調がいい」
オーブが発売した腸活サプリ「AuB BASE(オーブ ベース)」を飲んだ購入者の声だ。鈴木氏は「研究成果が出ているので当然だがうれしい」と素直に喜ぶ。
それだけ自信を持っていた。アスリートの腸内には免疫機能を整えたり、腸の動きを活発にしたりする酪酸菌が多く、菌の多様性(種類の豊富さ)も高いことが分かっているからだ。
その知見を生かし、酪酸菌をメインに29種類の菌を配合した独自の「アスリート菌ミックス」を開発した。試作品を一般モニターに2週間摂取してもらったところ、平均して酪酸菌を3.7%、菌の多様性を7.5%増加させるという検証結果を得た。
現役時代から腸内環境の重要性を認識していた鈴木氏は2015年10月の創業以来、超一流といわれるアスリートの腸内細菌を集めるため「うんち頂戴」と声をかけ続けた。
今でこそ腸内環境が健康に与える影響が注目され、ヒトの便が“茶色いダイヤ”といわれるが、当時は呼びかけるとけげんな顔をされた。最初に応じてくれたのは、昨年のラグビーワールドカップ日本大会で大活躍した松島幸太朗選手。第一声は「えっ、何いっているの?」と若干引き気味だったが、鈴木氏が「将来のため。アスリートのためになるから」と半強制的に押し切ったという。
箱根駅伝で青山学院時代に「山の神」と呼ばれた陸上(プロランナー)の神野大地選手、プロ野球・東京ヤクルトスワローズの嶋基宏選手といったトップアスリートが続々と協力。その数は500人(27競技)を超え、検体数は1000を突破した。
3~5歳児も狙う
「世界的にみても、これだけのアスリートの便を持つ会社はない」と自負。アスリートの腸内細菌を研究する米ハーバード大発ベンチャーから「どうやって集めるの?なぜそんなにアスリートが協力してくれるの?」と悔しがられるほどだ。
4年間・500人超の研究データの希少性を評価した企業や大学から共同研究の依頼が舞い込む。香川大学とは18年4月に共同研究を開始。至学館大学や京都大学とも手を組む。食品メーカーからも自社の持つ商品がアスリートの腸内環境に与える影響を研究したいと声を掛けられる。
腸内環境を整えると腸本来の働きである消化・吸収が効率よく行われ、必要な栄養素を体内に摂取し不要なものを排出する流れがスムーズになる。内臓の代謝も促す。ウイルスへの免疫も高まり、美肌効果も期待できるという。
発売した腸内サプリは昨年12月、自社ECサイトで発売したが、事前にクラウドファンディングで購入を募ったこともあって、大きな広告宣伝をかけずに約2カ月でアスリートの腸内環境に近づきたいビジネスマンら1000人超の定期購入者を獲得。年内に1万人まで増やすと意気込む。
鈴木氏は「4年間の研究開発を経て、サプリ販売で『稼ぐ』という第2フェーズに入った」と意欲的だ。今後もアスリート菌を生かした商品を増やすとともに、特許ビジネスにも力を注ぐ。
また小学校就学前の子供もターゲットに据える。「腸内環境は3~5歳で決まるといわれており、保育園などにもアプローチしていく」(鈴木氏)考えで、子供が飲みやすいように現状のカプセルとは違うタイプの開発を目指す。(松岡健夫)