キリンビールは17日、国産ウイスキーの新ブランドを立ち上げ、今春から市場投入すると発表した。国産ウイスキーは国内外での人気の高まりに伴う原酒不足で既存ブランドの製造終了が続いており、新ブランドで事業基盤を強化。2020年は国産ウイスキー販売額で前年比22%増の39億円を目指す。
新ブランドはプレミアムクラスに位置付ける「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」(4月21日発売)と中価格帯で展開する「キリンウイスキー 陸」(5月19日発売)。
富士は、「キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所」(静岡県御殿場市)で製造する。トウモロコシやライ麦などの穀類を原料にした3種類の「グレーン原酒」をブレンドし、ほんのり甘い豊かな「樽熟香」やかんきつ系の香味を感じる仕上がり。当初はホテルのバーといった飲食店向けのみで展開し、ブランド確立を目指す。アルコール度数は46度、700ミリリットル瓶の想定価格は6000円前後。
一方、陸は、グレーン原酒を主体に麦芽を原料とする「モルト原酒」をブレンドした。ハイボールやお湯割りなど飲み方を変えても、たる本来の味わいが感じられるようにした。飲食店のほか、家庭向けにも展開する。アルコール度数50度、500ミリリットル瓶の店頭想定価格1500円。
年間販売目標は富士が1万ケース(9リットル換算)、陸が4万2000ケース。
キリンは国産ウイスキーの製造強化のため、総額80億円をかけて昨年から富士御殿場蒸溜所の原酒貯蔵庫や蒸留設備の更新などに取り組み、来年夏ごろには貯蔵能力が現在比2割増となる。こうした設備強化のタイミングを「ウイスキー造りの第2創業期として戦略を練り直し、(ものづくりを)体現するブランド立ち上げに至った」とマーケティング部洋酒・海外ビールカテゴリー戦略担当の根岸修一氏は話す。
同社は国産ウイスキー「富士山麓」ブランドでフランス向けの輸出展開を始めており、昨年は約7000ケース(12本換算)を販売した。新ブランドの富士も今後、海外展開する方針だ。
国産ウイスキーをめぐっては、ニッカウヰスキー(東京)が主力の「竹鶴」の高級商品3種類の販売を3月末で終了するなど原酒不足の影響が広がっている。ニッカは21年までに約65億円をかけて北海道と宮城県の蒸留所の生産設備を増強し、原酒を2割増産する。
昨年に「白角」の販売休止を発表したサントリースピリッツ(東京)も約60億円を投資し、滋賀県の貯蔵庫を増設する。