携帯電話大手による第5世代(5G)移動通信システムの商用サービスが今月から始まるが、高すぎる期待とは裏腹に当面は限定的なサービスにとどまることになる。通信エリアや対応端末が不十分なためで、こうした条件がそろって生活や産業での5Gの活用が本格化するまでには時間がかかりそうだ。
「あらゆる体験が手の中で、スマートフォンでできる」。ソフトバンクの榛葉淳副社長は5日の会見で強調した。だが、当初は限られた場所での限られたサービスにとどまる。5Gに対応するスマホ端末も種類が少なく高額機種が主体。VR(仮想現実)ゴーグルなどの活用拡大も期待されるが、スマホに代わるキラーコンテンツは見いだせていない。
野村総合研究所は、5G対応の携帯電話端末の販売が令和3年度の時点で全体の1割未満、過半を超えるのは7年度と、緩やかな普及になることを予測する。
通信エリアも一気に広げることは難しい。5Gに割り当てられた電波は4Gに比べ飛びにくく、細かく基地局を整備する必要があるからだ。しかも、初期段階では4Gの通信網に5Gの基地局をつないで作動させる方式で、低遅延などの5Gの性能が十分に発揮できない。
このため5Gサービスは段階を踏んで進化していく見通し。当初の令和2~3年は限られたエリアで高速通信ができる「エリア限定期」、3~4年は「エリア拡大期」とみなされている。今夏にも4G電波の5Gへの転用が解禁されれば、4G基地局を5Gに置き換えることが可能になり「エリア拡大に弾みがつき、各社が基地局整備計画を前倒しする」と総務省幹部は指摘する。
「フル機能活用期」は4年以降とされ、通信エリアも5G基地局だけで通信網を構築する方式への移行が進み、低遅延や多数同時接続など真の実力を打ち出せるようになる。これがスマホやVR端末を使った4Gの延長上のサービスから、5Gを本格的に活用するサービスに転換する節目となりそうだ。(万福博之)