新型コロナウイルスに伴う重症者を減らし、社会への影響を最小限にするため、25日に政府がまとめた基本方針では、企業にテレワーク(在宅勤務)の推進を呼び掛けている。各企業は対応に追われるが、必ずしもすべての業務でテレワークができるわけではない。普段からテレビ会議を活用するなど導入しやすいとされるIT業界でも限界はあるといい、感染拡大防止と事業継続の両立には優先すべき業務を事前に見極めるなどの工夫が求められている。
「どうしても人が出てきてやらなければならない業務があった」。IT企業のGMOインターネットの広報担当者はそう語る。同社は新型コロナウイルスの感染者が国内でも数例確認され始めた1月27日に東京や大阪など都市部の事業所で働く約4000人に在宅勤務を命じた。しかし、2月10日に方針を転換。社外だけでは仕事が難しい職場の1000人程度については出社を認めたという。
同社によると、取引先企業のセキュリティー基準でWEB会議ができないといったケースや、社内システムのメンテナンス、郵便物の受け取りなどは、出社して行う必要があるのだという。また、従業員の出社に伴い、社内の定期的な消毒や、業務のバックアップなどで出社する従業員も出てきている。
無料通信アプリ大手のLINEも26日から希望する社員が在宅勤務を選択できる制度を導入した。同日は3~4割程度の社員が在宅勤務を選択したという。だが、セキュリティーレベルの高い情報を扱っていたり、社内にある業務ツールを使わないと業務ができなかったりと「業務可能な環境がオフィスにしかない社員もいる」(広報担当)。
楽天も19日に在宅勤務の対象を全従業員に拡大した。ただ、「業務上支障が出ないように強制はせず、部署ごとの判断に委ねている」(同社広報)といい、今も多くの従業員が出社して勤務を続けているという。
感染拡大対策として政府が推奨し、多くの企業が導入するテレワークだが、SOMPOリスクマネジメントの飛鳥馬隆志上席コンサルタントは「テレワークだけでは限界がある」と指摘する。その上で「出社が必要な業務は優先すべきものをあらかじめ決めておき、感染者が発生したらバックアップできる体制を取るなどの工夫が大切だ」と話している。
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テレワークをする上での主な注意点
・労働時間の適正な把握
・深夜労働の禁止など、長時間労働とならないような対策の実施
・業務内容や業務遂行方法の明示
・評価方法や賃金制度の明示
・新たに生じる費用負担を労使間で協議
※厚生労働省のガイドラインを参考に作成