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就職氷河期世代の雇用促進は中小に好機 全国中小企業団体中央会・森洋会長

 バブル崩壊後の就職難に直面した30代後半~40代を中心とした「就職氷河期世代」。今も無職や非正規雇用を余儀なくされる人がいる。政府は3年間で30万人の正社員化を目指す方針を示したが、とりわけ深刻な人手不足に直面する中小企業にとっては朗報だ。必要な支援は何か。全国中小企業団体中央会の森洋会長に聞いた。

 氷河期世代の採用強化に政府がかじを切ったのは、中小企業にとってチャンスだ。いま最大の経営課題は人手不足。仕事はあるのに人手がなくてこなせない企業もある。新卒者の多くは大企業に就職し、中小は中途採用に頼らざるを得ない。中小は社員同士の距離感が近く、就職後に困りごとがあっても手を差し伸べやすい。今回の取り組みで人材が掘り起こされるのを歓迎したい。

 氷河期世代の中には、これまで仕事に就いていなかった人もおり、教育や職業訓練が必要な場合もあるだろう。企業がそうした状況に理解を示し、本人にやる気がある以上は前向きに支援するという基本的な姿勢が必要だ。政府には、氷河期世代の能力開発に取り組む団体や企業に積極的な支援をお願いしたい。

 いろんな業種や企業でつくる中小企業組合の中には、働きたい人と働き手が欲しい事業所をつなぐ組合もあるし、後継者の養成機関を設けている組合もある。中央会はその全国組織として情報やノウハウを広く共有できる。求職者と中小のマッチングや教育訓練で大いに活用してほしい。

 政府の官民会議では、市町村ごとに対象者の実数を把握して、中小と人材をきめ細かくマッチングする方法を提案した。都道府県単位よりも範囲を狭めることで丁寧な照合が可能だ。市町村は中小の状況も把握しているので、対象者に寄り添って「あの会社は良い雰囲気ですよ」といった情報も提供できるだろう。

 自治体の採用に応募が殺到していると聞く。意欲はあるのに不採用になった人に「市内にはこんな企業があるよ」と紹介してはどうか。中小にとっては、一から採用活動するよりも人材を見つけやすく、双方にメリットが大きい。

【プロフィル】森洋

 もり・ひろし 1942年生まれ。2019年6月から現職。全国石油商業組合連合会会長や政府の官民連携会議のメンバーを務める。神奈川県出身。

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