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止まらぬ肺炎拡散 操業停止長期化や価格高騰…企業も苦悩

 ものづくり系は部品調達難、マスク生産も「パンク」

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続く中、国内の中小・ベンチャー企業に影響が出始めている。特にものづくり系のベンチャー企業は部品の多くを中国から調達しており、対応に頭を抱える。一方、高機能マスクの製造メーカーに国内外から大量の注文が殺到するなど、不測の事態に直面する企業もある。

 操業停止長期化も

 電動バイク開発製造のグラフィット(和歌山市)は、ペダルと電動の両方で走れるハイブリッドバイク「GFR-01」を2017年秋に発売。このバイクの製造に要する部品点数のうち約9割が中国製だ。例年、春節(旧正月)の時期には在庫を積み増すなどの対応を取っているが、感染の拡大は「想定外の事態」(鳴海禎造社長)。製造委託する中国広東省にある工場で働く労働者の多くが、感染の発生源とされる武漢市がある湖北省の出身で、中国国内の移動制限もあり、旧正月で帰省した従業員が工場に戻れなくなっているという。25日の春節から続く操業停止の長期化は避けられない状況だ。

 家電ベンチャーのシフトール(東京都中央区)も、部品の多くを中国からの調達に頼る。岩佐琢磨社長は「中国以外の国では、部品メーカー間の調達・供給網が十分に整っていない」と述べ、他国で生産する難しさを打ち明ける。

 このほか、スマートフォン向けアプリ開発のフェンリル(大阪市北区)は、2月に東京や大阪などで開催予定の技術者向けセミナーなど計7件のイベントの中止を決めた。音声コンテンツなどを配信するオトバンク(東京都文京区)は、全従業員に対して在宅勤務を指示している。

 感染拡大で中小・ベンチャー企業の経営や事業に悪影響が出始めていることから、経済産業省は、経営相談窓口を各地方経済産業局や政府系金融機関、商工会議所などの商工団体に設けた。

 一方、国内規格をクリアした高機能マスクを製造するメッシュ製品加工メーカー「くればぁ」(愛知県豊橋市)には、国内外から通常の20倍近い注文が殺到している。同社のマスクに使われるフィルターは、花粉粒子などの捕集濾過(ろか)効率試験を通過しており、中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行時にも注目を集めた。1万3000~1万8000円と高価格帯の商品が多いが、注文は26日に初めて愛知県内の感染者が確認されて以降、1日200~300件入るようになり「パンク状態」になった。

 国内の病院のほか、中国の行政機関からも問い合わせが入っているものの、手作りのため、29日現在、発送は1カ月待ちになっている。

 急激に価格高騰

 インターネットの通販サイトでは、使い捨てマスクの価格が急激に高騰している。通常は数百円の商品が10倍近くの値段で販売され、中には1箱4万円を超える商品も出てきている。

 通販大手のアマゾンジャパンでは、通常は数百円から1000円程度で売られている箱入りのマスクが、数千円程度の値段が付けられている。アイリスオーヤマのサージカルマスク(60枚入り)は7事業者が出品しているが、最低価格でも4万2000円前後の値が付いている。楽天市場やヤフーショッピングなど他の大手通販サイトでも同様の事態が生じている。

 ネット通販は海外からも購入できるため、中国を中心に需要が増え、商品の出品者が価格を引き上げているとみられる。

 新型インフルエンザが発生した場合の政府の行動計画では、国民経済の安定のため、食料品や生活関連物資の価格が高騰しないよう、関係省庁が要請することになっている。今回の新型コロナウイルスは指定感染症のためこの行動計画の対象からは外れるが、政府に同様の対応を求める声が出る可能性もある。

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